short story

20□ほら、大勝利！ ページ31

今日試合見に行くね！朝方そうAに言われて、
コートに入るなりこの広い会場の隅から隅まで目を凝らす。

何万人と入る中のこの会場で
たった1人の人を見つけ出すなんて到底無理な話だけど
何故だか出来てしまうのは、これが恋だからかもしれない。






「…あ、」







小野寺、なんてわざわざプラカードを持って応援してくれる彼女
隣には東海大の頃のチームメイトもいて顔が綻ぶのは仕方ないと思う。


思えば、俺の片思い歴は早くも5年を迎えてて
大学に入学したあの頃からいままで
彼女以外の女性にときめいたことなど一度もない。

大学卒業して、そのままプロに行ったから
彼女とはもう遠距離が続いてる



それでも、俺の気持ちが冷めていくことはなくて
大学の頃よりも連絡はしなくなったけど
時たま来るメッセージだったり、時間があれば飲みに行ったり

決して2人ではないけれども、それでも彼女がいる空間が居心地がよくて。

彼女が見てるから頑張ろう、
そう思うといつもよりも試合に気合が入る
ブロックを取ろう、速攻を決めよう
出来ればサービスエースも取りたい。




そんな欲が出るのは
かっこいい、凄い、そう思われたい単純な男心のわけで。

…単純な奴だなって言われそうだ。




彼女が座ってる席までの距離は割と近くてベンチ近くの席
東海大魂、なんて書かれたプラカードはメンバーたちの目にも映るみたいで
知り合い？なんて�盒兇気鵑吠垢�れた。







「東海大の頃の同級生です」

「へー。あの子可愛いな」

「え、どの子っすか？」








すぐに反応したのは意外にも西田で、彼女を見るや否や俺の腹を突く。
彼女っすか？なんてニヤニヤしながら。








「残念ながら違うけど」

「なんだ、違うんすか」









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