検索窓
今日:1 hit、昨日:2 hit、合計:63,785 hit

14□恋始めました2 ページ15

足が勝手に動いた。
追いかけるように小走りで向かう途中
マネージャーの声が微かに聞こえた気がしたけど
いつもはマネージャーの声にすぐ反応してしまうのに、
その声すらも無視して追いかける。

着いたのは、体育館から少し離れたところで
誰も居なくて静かな空間に息を潜めるように様子を伺った。





「俺、先輩に一目惚れしたんです。ずっと前から」

「え、」

「好きなんです。付き合ってください」

「いや、あの…」

「返事はいますぐじゃなくていいです。先輩がバレー大事なのは知ってるし、ゆっくり考えてほしいんで」





それじゃ、なんて逃げるように立ち去っていく後輩に
Aはただその場に立ち尽くしてた。

少し赤くなってる顔がそこにはあって
さっきよりもずっと強く、心臓が嫌な音を立てる。





「A、」

「っ、祐希くん。…どうしたの?」

「今の誰?」

「委員会の後輩。1年の子だよ?」

「……告られてたけど」

「聞いてたの?祐希くん盗み聞きは悪いよー」




そう言って笑うこいつに、なんだか無性にイライラして。
…なんで焦ってるんだ俺。

さっきまで頭にあったマネージャーの顔よりも
照れたように話してたさっきの光景が頭から離れなくて。

思わずこいつの腕を掴んだ。





「…祐希くん?」

「断ってよ」

「え?」

「あ……いや。バレーの方が大事って言ってたし、それに好きじゃない奴と付き合っても…」





咄嗟に言ってしまった言葉に後悔しながら、慌てて理由を付け足した。
そんな慌てる俺に、またこいつは笑う。




「……ちょっと嬉しかったけど」

「え?」

「…でも、まあ。祐希くんの言う通りかも。付き合うなら好きな人がいいし。心配してくれてありがとう。もう少し考えてみる」

「…うん」




さ、練習戻ろっか!
いつもの調子で笑いかけてくるこいつの笑顔に
ドクっと心臓が高鳴って、同時に安堵感に襲われた。



体育館に戻ってまた同じように先輩に話しかけられたけど
いつものドキドキが嘘みたいになくて。
その代わりに自然と目で追ってしまうAの姿と
祐希くん、なんて笑ってくれるこいつに
心の奥底にあった感情が、ゆっくりと顔を出してるみたいだ。







恋始めました

ずっと片想いを見守ってくれていた君を好きになるなんて、
君は幻滅するんじゃないだろうか。
……でも、自分の心に嘘はつけないから。



title.永遠少年症候群

8□恋、始めました→←14□恋始めました



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (65 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
254人がお気に入り
設定タグ:全日本男子バレー
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

noranekosan(プロフ) - リリさん» リリさんはじめまして。ありがとうございます!私もリリさんのお話読ませて頂いてたので嬉しいです。゚(っ゚´ω` ゚c)゚。今後も頑張って書いていくので、是非とも見ていってください!! (2019年11月12日 22時) (レス) id: e3a91e1b0b (このIDを非表示/違反報告)
リリ(プロフ) - はじめまして。いつも楽しく読ませていただいています。のらねこさん(とお呼びしていいのでしょうか?)の書かれるお話どれも素敵なので、これからも楽しみにしています(*´˘`*) (2019年11月12日 16時) (レス) id: 3f90fe2b5d (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:as | 作成日時:2019年11月2日 2時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。