僕の願いは誰にも言わない

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出会ったのは、4年前の合同就職説明会。

第一志望はもう決めてたんだけど、たまたま隣のブースが気になって。

いちお同業ではあるし、パンフレットもらっとこうかな。
ぐらいの緩いキモチだったのに、10分後には第1志望をここに替えてた。


あの声を、聴いたから。


小さなブースの一角が少し段になって高くなってて、キーボードが1台置いてあった。

ライブでもやるのかしら。って待ってたら、キィンてマイクがハウリングした後、ポーン… と響いた1音。

真ん中にのっそり立った小さな人が、すぅっと大きく息を吸って。

シンプルなピアノに合わせて歌い始めた瞬間、地面がグラリと揺れた気がした。

その場にいた誰もが… もちろん、私も。
圧倒されて、夢中になった。
手を伸ばして、リズムに合わせて踊る人たちさえいて。

まるで、マイクを持ったライオンみたい。
あんなに小さな身体なのに。




努力の甲斐あって、私は無事にその会社に就職できた。
本当はプログラミングやろうと思ってたのに、まさかゲーム音楽の会社に行くなんて。

入社後も一生懸命勉強して、資格も取って、三年目にようやく部署異動が叶ったの。


憧れの渋谷課長がいる、開発部に。


歓迎会の夜は、斜め前からその顔を見つめるだけでドキ ドキした。

いつもよりマスカラ多めに塗ったし、目ヂカラも万全！
でも、緊張していつもよりたくさんビール飲んじゃった。

ちょっとぐらい課長の私生活、知れるかしら？なんて、思ってたのに。

「課長、式はまだなんすか？
俺、余興やりますよ。」

「ぁん？」

「またまたぁ。
いるんでしょ？ かわいい婚約者！」


部署では先輩だけど歳は下の、橋本くん。
あーあ、余計なこと聞いちゃった。
せっかく同じ部署になったと思ったのに、いきなり失恋だなんて… ！


しょんぼりしてチビチビとお酒飲んでたら、

アレ？
なんか課長、私のこと、見てる… ？


橋本くんが席を立って、課長の隣が空いたから、思い切って隣に座って、お酌しに行く。

「…ご結婚、されるんですね。

オメデトウ、ゴザイマス。」

めでたいだなんて微塵も思ってないけど…

「あぁ… 」

私が注いだビールに口を付けて、渋谷課長はため息をついた。

「…どうやろ、な。」

「…なんですか？それ。笑」

「あーーーー。。。


なんかな。



このまま結婚しちゃ、アカン気がすんねん。」



え、え、まさかの、マリッジブルー… ？？

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