僕の願いは誰にも言わない

12 ページ12

○green side○

丸ちゃんの彼氏、はやっぱり俺の嫌いなタイプやった。


ホンマ、苦手やわ。


ロン毛束ねたひげ面のイケメン。
愛想もそないにないし。
なんか、ちゃう。いや、絶対ちゃう。

しょーにぃは才能のある、ええ人や言うてるけど、俺は絶対認めんからな。

どこがええねん、こんな…まぁ、丸ちゃんメンクイやからなぁ。
そこは負けるかもしらん。

けど。絶対ちゃうねん。
俺が守ったるから、あんな男やめとき？

あの日やって。
俺がチビで弱くなければ…あんな傷、負うことなかったのに。


夏の暑い日。丸ちゃんが６年生ん時。

俺たちは３人で市営プールに行った。
閉園時間ギリギリまで遊んでたから、
出てきたときにはもうほとんどお客さんは残っておらんくて。
更衣室に戻ったのは俺らが最後やった。

丸ちゃんは女の子やから、お着替えにちょっと時間がかかる。
いつも自転車置き場でジュース飲みながら待ってたけど
大概飲み終わるまでには

「お待たせ〜」

って走ってきたのに。
その日に限ってなかなか出てこん。
そろそろ帰らんと、ひなちゃんに怒られてまう。

「しょーにぃ、丸ちゃん遅ない？」
「おん。おかしいなぁ、自転車まだあるし先帰るわけないもんなぁ」

丸ちゃんドジやから、なんか落として探してるんかもしれん。
こないだ遅かった時は自転車の鍵落として、泣きながら探してた。

プールの入り口はもう鍵かかってたけど、片付けしてる人たちがいて
女の子、まだおりませんか？って聞いてみたけど
更衣室にはもう誰もおらんよ、って答えやった。

もう１回見てみるねって言ってくれたから
俺たちはプールのほう探しに行かせてもらった。

静かな静かなプールサイド。人影はない。

ぐるっと一周回ってみようって歩きはじめて、すぐ見つけた。
隅っこのトイレの前に片方だけのピンクのビーチサンダル。


「イヤぁっ」


って声が聞こえて、俺たちは走った。


「丸ちゃん！どないしたっ？」
「丸ちゃん！丸ちゃ… ！！」


トイレまで呼びながら走った。


後少し、ってところでガタン！ドン！って大きな音がした。

女性用の入り口から、勢いよく男の人が飛び出してきて
俺にぶつかった。
捕まえようとして、手伸ばしたのに呆気なく振り払われた。


「丸ちゃん！」


先にトイレに入ったしょーにぃが叫んだ。
転びそうになりながらふたりの元へ向かった。



一番奥の個室。
丸ちゃんが倒れてた。

13→←11

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す