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第30夜 ページ30

「速さには申し分はない。だが、速さ故に細かな動きが疎かになっている。初めは手足の指先まで意識しろ。慣れれば習慣として身につき、意識しなくても出来るようになる。」


めちゃくちゃ教えるの上手いじゃないか、とお茶を啜りながら善逸は心の中で悪態をつくものの、素直に朝霧の言葉を受けいれた。

稽古が終わると、二人は縁側に座り、お茶を飲んだ。
時には休息も必要だ、と善逸の身体を心配しての行動であった。


「すまないな、付き合ってもらって。」
「い、いえ!寧ろありがとうございます。」
「そうか。善逸は飲み込みが早い。上達するのも直ぐだろう。」

お疲れ様、と朝霧は隣に座る善逸の頭に撫でる訳でもないが手を乗せた。

たったその一つの動作で善逸は2人の人間を思い出す。


(………じいちゃん、宇髄さん。)


善逸は何となく、何故宇髄が朝霧に背中を安心して任せていたのか分かった気がした。

それと同時に、己の未熟さを感じた。


「俺は弱いです。臆病です。朝霧さんほど強くはなれない、朝霧さんみたいにはなれません、期待には添えないですよ。」


善逸がそう言うと、朝霧は一瞬戸惑ったが、直ぐに微笑み、こう告げる。

「俺も弱いし、脆い。ずっと死ぬ事に怯えながら生きてる。だけど、守りたいものがあるんだ。」


朝霧は頭の片隅で己の師を思い浮かべる。
そして、殉職した仲間達を、思い浮かべる。
そして、また、引退した仲間を思い浮かべる。

死ぬ事に怯えながら、というのは朝霧が死ぬことを指しているわけではなかった。
朝霧は周りの人間よりも死にづらいものとなってしまった以上、これから避けることの出来ない運命を背負わなければならない。

その事に事情の知らない善逸が気づくことは無かった。


そして、その時に悲しい音を響かせていた事など本人は知らない。
ただ、その場に居た、善逸のみが、その悲しい音に胸を痛めた。

「……俺、変われますかね。」
「大丈夫だ。焦らなくていい。」

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天麩羅 - わわわ更新されてるぅぅううう!! (2020年3月15日 22時) (レス) id: eb9a0c61ed (このIDを非表示/違反報告)
天麩羅 - わぁーーーぁああああ!面白いぃぃぃぃいいいい!更新頑張って下さいぃいい!! (2020年3月14日 22時) (レス) id: eb9a0c61ed (このIDを非表示/違反報告)
小坂谷 真夜(プロフ) - いおりさん» ありがとうございます。そのようなお言葉本当に嬉しい限りです。 (2020年2月1日 22時) (レス) id: 79a8fd2e1c (このIDを非表示/違反報告)
いおり - めっちゃどタイプの小説きたーーーっ、これからも期待して待ってます。更新頑張ってください (2020年1月12日 14時) (レス) id: bce55b4438 (このIDを非表示/違反報告)
小坂谷 真夜(プロフ) - mo4さん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです。 (2020年1月12日 13時) (レス) id: 79a8fd2e1c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:小坂谷 真夜 | 作者ホームページ:@lotus_1022  
作成日時:2019年9月9日 22時

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