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「これで準備は完了ですわね」
「さて、いよいよ出発……といきたい所でしょうけど、長い間この家を空けておくのは心配ですわ。」
シロギツネさんが言う。一体どうするのだろう。
「弟に預けるんですの。付いてきてくださる?」
「あ、はい!」
シロギツネさんに連れられて、氷の上を歩く。
「いましたわ。おーい、アオギツネー!」
シロギツネさんがそう叫ぶが、しばらくしても誰も来なかった。
「チッ……連れて来ますわ、ここで待っていてください」
シロギツネさんはそう言って、荷物を置いてから向こうの方に走って行った。
しばらくすると、シロギツネさんと……おそらくアオギツネさんであろう男の人が歩いて来た。アオギツネさんはぐったりしながら、シロギツネさんに引きずられていた。思わず笑いそうになる。
「お待たせしました、連れて来ましたわ」
「姉ちゃん……無視したのは悪かったけどよ……引きずらなくてもいいだろ……」
「はあ……大事な話ですのよ」
そう言ってアオギツネさんから乱暴に手を離すシロギツネさん。アオギツネさんは「いてえ!」と言って、地面に頭をぶつける。その様子がおかしくて、僕はついに吹き出してしまった。
「ぷっ……あははは!」
「笑うな!笑うな小僧!」
「……」
シロギツネさんがジトッとした目でこちらを見る。僕とアオギツネさんはふざけるのをやめた。
「……んで、話ってなんだよ」
アオギツネさんがシロギツネさんに聞いた。
「えー、コン。話と言うのは、私が留守にしている間、家を預かっていて欲しい、ということですわ」
シロギツネさんが答える。
「……預かるゥ?預かるって、姉ちゃんどっか行くのかよ。バカデカイ荷物持ってるしさ」
「ええ。こちらの子の、帰る方法を探しに」
シロギツネさんが、アオギツネさんに僕のことを紹介する。僕は一応アオギツネさんに軽く頭を下げた。
「あー、そいつやっぱり人か。それなら仕方ねえ、預かってやるよ。特に用事もねえし」
「あら、ずいぶんあっさりですわね」
「ただの気まぐれだ。……あ、そうだ」
「小僧。名前は?」
アオギツネさんが僕に向き直り言った。
「えっと、Aです。」
「A、か。大事にしろよ。じゃ、またな」
アオギツネさんがヒラヒラと手を振りながら去るのを見終える。
「行きましたわね。私たちも、そろそろ行きましょうか」
シロギツネさんがそう言うと、僕もそれに合わせ歩き出した。
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るか - 面白かったです (2019年9月15日 22時) (レス) id: 453cf00967 (このIDを非表示/違反報告)
セイキン - 面白かったです (2019年8月21日 1時) (レス) id: 453cf00967 (このIDを非表示/違反報告)
卯月はかせ - 面白い……! 瑠璃狐は一体何者なんや……! (2019年8月21日 1時) (レス) id: d742f00055 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まふぃーる | 作成日時:2019年5月5日 18時