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その人は、僕の方を見たあと真っ直ぐこちらへと歩いて来た。やっぱり、耳が生えてる。コスプレ……じゃないだろうしなあ。さっきの狐から考えて。……名前が分かるまでは、『その人』や『この人』とでも呼ぼう。
「大丈夫ですの?襲われていたみたいだけれど……」
喋った?って、当たり前か……。
「だいじょ……コホッ、カハッ……」
「大丈夫です」と言おうとしたが、先程の怪我のせいか、声が上手く出ない。
「まあまあ、これは大変。
「はい」の代わりに頷いた僕を見て、その人は僕に手を差し伸べてくれた。
「掴まって下さる?そのままでは歩けないでしょう。ゆっくり、ゆっくり立ち上がって下さいな。」
僕はその人の手に掴まって、なんとか立ち上がることができた。歩き出したその人が、
「……シロクマ」
と小さく言っていたことに、僕は気がつかなかった。
しばらく歩いて、雪原、というより北極のような所へたどり着いた。
恐らくこの人の家である所に入り、暖炉がある部屋へ案内された。僕はそこにあったソファーに座らされ、その人は、どこか別の場所へ行ってしまった。
(さっきの化け物は、何だったんだろう)
あの血が全て返り血だとすると、確実に僕以外の被害も出ているだろう。あれほどの血を浴びるなんて、一体何人を手に掛けてきたんだろうか。
「お待たせいたしましたわ。傷の手当てを始めましょう。」
そう言ったその人の手には、救急箱が握られていた。
色々な傷の手当てをされて、僕は色んな意味で疲れ果ててしまった。動物なのか人なのか全くわからない。
あ、そういえば。
「あの……あなたの名前ってなんていうんですか?」
僕は聞いた。
「あら。誰かに名前を聞く時は、まずは自分からではなくて?
ふふ……冗談ですわ。
シロギツネさん、か。
「僕は、Aと言います。あの、これからどうすれば……」
僕が言い終わる前にシロギツネさんが言った。
「とりあえず、寒いでしょう。
そう言ってシロギツネさんは行ってしまった。
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るか - 面白かったです (2019年9月15日 22時) (レス) id: 453cf00967 (このIDを非表示/違反報告)
セイキン - 面白かったです (2019年8月21日 1時) (レス) id: 453cf00967 (このIDを非表示/違反報告)
卯月はかせ - 面白い……! 瑠璃狐は一体何者なんや……! (2019年8月21日 1時) (レス) id: d742f00055 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まふぃーる | 作成日時:2019年5月5日 18時