検索窓
今日:13 hit、昨日:0 hit、合計:3,399 hit

5. ページ5

その人は、僕の方を見たあと真っ直ぐこちらへと歩いて来た。やっぱり、耳が生えてる。コスプレ……じゃないだろうしなあ。さっきの狐から考えて。……名前が分かるまでは、『その人』や『この人』とでも呼ぼう。

「大丈夫ですの?襲われていたみたいだけれど……」

喋った?って、当たり前か……。

「だいじょ……コホッ、カハッ……」

「大丈夫です」と言おうとしたが、先程の怪我のせいか、声が上手く出ない。

「まあまあ、これは大変。(わたくし)の家で一旦お休みになられては?」

「はい」の代わりに頷いた僕を見て、その人は僕に手を差し伸べてくれた。

「掴まって下さる?そのままでは歩けないでしょう。ゆっくり、ゆっくり立ち上がって下さいな。」

僕はその人の手に掴まって、なんとか立ち上がることができた。歩き出したその人が、

「……シロクマ」

と小さく言っていたことに、僕は気がつかなかった。


しばらく歩いて、雪原、というより北極のような所へたどり着いた。
恐らくこの人の家である所に入り、暖炉がある部屋へ案内された。僕はそこにあったソファーに座らされ、その人は、どこか別の場所へ行ってしまった。

(さっきの化け物は、何だったんだろう)

あの血が全て返り血だとすると、確実に僕以外の被害も出ているだろう。あれほどの血を浴びるなんて、一体何人を手に掛けてきたんだろうか。

「お待たせいたしましたわ。傷の手当てを始めましょう。」

そう言ったその人の手には、救急箱が握られていた。

色々な傷の手当てをされて、僕は色んな意味で疲れ果ててしまった。動物なのか人なのか全くわからない。

あ、そういえば。

「あの……あなたの名前ってなんていうんですか?」

僕は聞いた。

「あら。誰かに名前を聞く時は、まずは自分からではなくて?
ふふ……冗談ですわ。(わたくし)は『シロギツネ』と呼ばれておりますの。あなたは?」

シロギツネさん、か。

「僕は、Aと言います。あの、これからどうすれば……」

僕が言い終わる前にシロギツネさんが言った。

「とりあえず、寒いでしょう。(わたくし)はお風呂を沸かしてきますので、どうぞごゆっくり。」

そう言ってシロギツネさんは行ってしまった。

6.→←4.



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (19 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
2人がお気に入り
設定タグ:市販書き   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

るか - 面白かったです (2019年9月15日 22時) (レス) id: 453cf00967 (このIDを非表示/違反報告)
セイキン - 面白かったです (2019年8月21日 1時) (レス) id: 453cf00967 (このIDを非表示/違反報告)
卯月はかせ - 面白い……! 瑠璃狐は一体何者なんや……! (2019年8月21日 1時) (レス) id: d742f00055 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:まふぃーる | 作成日時:2019年5月5日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。