07 ページ10
・
「つまり、俺達の役目はサッカーの熱さを教える先生って所か！」
「サッカーの熱さ……」
「まあその理解で間違いないだろう」
Aと鬼道はちょっと首を傾げていたが、円堂が言いたい事は伝わっているようだ。
「日本には俺達以外にもまだまだサッカーの才能を持った奴らがいる」
「世界に勝つにはそんな奴らを発掘し、束ねねばならない」
「それが僕達の役目です」
「……分かった」
漸くサッカー強化委員の役目を理解したようで、円堂の表情に笑みが浮かんだ。
「でも、俺達だってもっと強くなって日本代表を狙っていくんだよな？」
「当然だ。これからは代表の座をかけたライバル同士でもある」
「ああ。その前に次のフットボールフロンティアではお互い敵同士という事になるな」
「まぁ、そうなりますね」
代表の座を狙うライバルであり、FFでは優勝を争う敵同士になる。
それはそれで楽しそうじゃないか。
「言っとくが、俺はお前達には負けないぞ？」
「ああ、俺も負けるつもりはない」
「ふっ。……じゃあ行くか、サッカーをもっと熱くするために！」
そう言って円堂は拳を突き出した。それに合わせ俺と鬼道も突き出したが、一つ足りない。
それはAの拳だった。
「え？」
視線を向ければそこにはキョトンとした表情を浮べたAがいた。
「何をしている。お前も出せ」
「え。は、はい」
鬼道の言葉に困惑しながらもAは拳を突き出した。
俺達より小さく、そして白い拳が触れ合う。
「＿＿＿また会おうぜ、鬼道、豪炎寺、A」
「ああ」
「はい！」
＊＊＊
「不安か？」
帰り道、ふとAにそう尋ねた。
Aはいいえと言うように首を横に振った。
「サッカー強化委員については問題ありません。ただ、自分が思っていた以上に世界のレベルが上がっていたことに困惑していただけなんです」
Aはサッカー部の中で唯一世界を経験している存在だ。
その本人が言うんだ。年々基準レベルが上がっているんだろう。
「でも皆さんならやれますよ。日本を世界レベルに」
「言ってくれるじゃないか」
「僕にはできませんでしたから」
「お前もやるんだぞ」
「あいでっ」
この数日後にはこんなやりとりも暫く出来なくなる。
寂しさがないのかと言われれば嘘になるが、これが俺達に与えられた使命だ。一生の別れじゃない。
……そう思っていた矢先にそれは起こった。
その数日後、Aが姿を消してしまったのだ。
･
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 143人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：恵野 | 作成日時：2021年6月6日 0時
