39 王帝月ノ宮に舞い降りた天使 ページ42
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「予選第6試合、勝利したのは……王帝月ノ宮！」
予選第6試合
勝利したのは王帝月ノ宮だ。
「そして、王帝月ノ宮はフットボールフロンティア本戦への出場が確定しました！！」
実況の声を聞きながらベンチに向かう。
名だけの監督を囲うように集合する。
僕の隣には西蔭、その隣にはAが位置取っていた。
今回の試合は要求通りのものだったのか、特に何も言われることなく解散になった。
「A。帰るよ」
「！ ……うん」
フィールドをボーッと見つめていたAに声を掛ける。
こちらを振り返ったAの背中に黒い炎を纏った翼が見えた気がした。
今回の試合でAは“光輝く使者”から“光輝く破壊天使”と呼ばれるようになった。
……それもそうだろう。
今日の試合は、Aの真打ちである必殺技“デスインフェルノ”がどれほどの威力があるのかを試した。
その威力は彼女が使う必殺技“シャイニングエンジェル”を遥かに超えていた。
GKは1回目の“デスインフェルノ”の威力に負け、怪我を追った。
2回目はその威力を知ったDFが防ぎに向かったが、障壁にすら慣れず彼らも怪我を負う事になった。
あの光景には見覚えがある。
彼女が世界大会予選で使った“シャイニングエンジェル”と状況が酷使している。
「今日の試合はどうだった？」
「いつも通りだよ」
「そっか」
そういえばあの試合にはAに似た選手がいたっけ。
特に気にしてはいなかったけど、あの試合でAか過激化したのはあの選手が抜けてからだった。
「……調べてみるか」
彼女に似た顔つきを持ち、必殺技の系統が“闇”である男性。まるで対比の様な存在だったあの男性プレイヤーについて。
「ずっとフィールドを見ているけど、何か思う事でもあったのかい？」
「……何も思う事はない、と思う」
「でも何か思ったんだろう？」
最近は少しずつ心を開いてくれているのか、Aは自分が感じたことを話すようになった。
さて、今日は何を思ったのかな。
「……見ていたら、目を逸らしたくなった」
「逸らしたくなった？ どうして？」
「分からない。だけど、フィールドに倒れている人を見た瞬間……」
Aはそこまで喋った瞬間、言葉を詰まらせた。
きっと何と言えば良いのか分からないのだろう。
Aが話した言葉を頼りに今日の試合を振り返る。
あの時のAの姿を思い出しながら。
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作者名：恵野 | 作成日時：2021年6月6日 0時
