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試合終了のホイッスルが鳴り響く。
ほとんどがフィールドに転がり込み、声を出すことすらも苦しい程に息が上がっていた。
0-13
それがあの日……バルセロナ・オーブとの試合の結果だった。
圧倒的な実力差で俺達雷門イレブンは敗北した。
「日本のレベルはこの程度か」
「！ なんだと……ッ！」
俺の隣に立っていた染岡が相手チームのキャプテン…クラリオ・オーヴァンに吠える。
しかし体力を消耗して疲労を感じているのか、前に出ることを制する為に出した腕を掴み、染岡は大人しくなった。
「わざわざ日本まで来た甲斐がなかったな」
「しかし悪いプレーではない。このチームはもっと伸びる」
「何年先のことやら」
「日本の戦士達！ 現状では話にならないが、今後のあなた方の進化に期待する！」
俺の少し後ろに立つAの表情は俯いていた事もあって見えなかった。
ただ分かるのは、力一杯握りしめている拳が「悔しい」と言っている事だけだった。
「皆、よく頑張った」
響木監督はたった一言、俺達に向けて労りの言葉をかけた。それ以上は何も話さなかった。
誰もが悔しい気持ちを抱えたまま、その日は解散となった。
＊＊＊
「……負けちゃった、兄さん」
その声が聞こえたのは部室裏からだった。声の聞こえた方へ行くと、頭で浮かんでいた人物……Aが携帯を耳に当てて喋っていた。
兄さんと言っていたから悠さんの事だろう。
「……うん。お休みなさい、兄さん」
通話を終えたのか、Aが携帯をポケットにしまう。
そしてこちらを振り返った。
「うわあああっ！？ ……なんだ、豪炎寺さんじゃないですか」
金色のような瞳と目が合った瞬間、人をお化けのように見たAは後ろに後ずさった。
そして俺である事に気づくと、ホッとした表情でこちらに駆け寄ってきた。
「まだ残ってたんですね」
「ああ。ちょっとな」
「……」
「……」
……会話が続かない。
元々俺はお喋りな方ではないが、今日は特に盛り上がるような話は思い着かなかった。
気まずさを感じていたとき、先に口を開いたのはAだった。
「……僕、自分の実力を過信していたみたいです」
「A？」
「自分の実力は世界に通ずるって思ってました。……なのに今日の試合、僕は1点も取れなかった……！」
俯いたAの顔から光る何かがこぼれ落ちた。
……それは涙だった。
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作者名：恵野 | 作成日時：2021年6月6日 0時
