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4-3で帝国は雷門に敗れた。試合の後、俺は走っていた。
「はぁ……どこに行ったんだ……？」
ハーフタイム中に観客席を見渡していたときに見つけたんだ。
あれは間違いなくAだった。
Aの側にいたのは……王帝月ノ宮のキャプテン野坂悠馬とGKの西蔭政也。彼らがいた観客席は3人以外誰一人いない場所だった。だからAだと気づく事ができた訳だが。
観客席を抜け、廊下を走っていたときだ。
目の前に見覚えのあるベージュ色の髪を捉えたのは。
「A！！」
気づけば見えた小さな背中へと走って、その細い腕を握っていた。
こちらを振り返ったAは光のない瞳を大きく見開いて俺を見た。
「一体何処に行っていたんだ！ 暫く連絡がないと思ったら、王帝月ノ宮に転入していたなんて……！」
「か、ぜ……」
華奢な肩を掴み、夢中でAにそう問いかけていた。
今まで何をしていたのかと。
どうして一度も連絡をしてくれなかったのかと。
どうして世宇子ではなく王帝月ノ宮という学校にいるのか。
そして……
「あのプレーは何だ……！」
怪我人を出すようなサッカーはもうしないと俺達の前で誓ったのは誰だ？……お前だろう、A……！
予選第4試合
その試合は相手チームの棄権により、前半戦で試合は終了した。
何故相手チームは棄権したのか。
それはAが使った必殺技によるものだと言う。
故意的ではないのなら良かった。
しかしその試合の映像を見て……Aが必殺技を使ったのが故意的である事が分かった。
「どうしてあんな試合をしたんだ！！」
そう声を荒げた瞬間だった。
「う……ッ、あああ……っ！！」
「A……？」
目の前のAが突然苦しみ始めたのだ。
突然の変わりように固まってしまったときだ。
「何をしているんだい？ 僕の天使に」
「！」
後ろから聞こえた声。
振り返るとそこにいたのは……
「野坂……悠馬」
「勝手にいなくなってはダメだろう？ 心配になる」
微笑を浮べた人物、野坂がそこにいた。
彼はこちらに一度目線を向けた後、Aの元へと歩いた。そして、その細い腕を掴んだ。……まるで俺がいないかのような態度で。
「待て！ どうしてAは王帝月ノ宮にいる！！」
去ろうとする背中にそう叫んだ。
野坂は一度歩みを止め、こちらを振り返った。
「それが彼女の意思だったからだ」
野坂は一言そう言って去って行った。
Aの腕を引いて。
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作者名：恵野 | 作成日時：2021年6月6日 0時
