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帝国のGKは控えの人が出ているようで、正GKである源田幸次郎はベンチに座っている。
それに、あのGK……未経験者だね。先程雷門の11番君が“ファイヤートルネード”を打った際、しゃがみ込んでいたから間違いないだろう。
そんな使えないGKがいる今、ゴールは誰が守るのか。……ま、DFだよね。
「しぶといね、帝国」
「伊達に強豪校じゃないって訳だね」
帝国のDF達はゴールの前に立ち、身体を張ったディフェンスでボールを防ぐ。
対する雷門は今が攻め時と言わんばかりに攻撃を繰り出す。それも本来のポジションを忘れてまで。
「まだ前半戦なのに、あんなに飛ばして大丈夫かな」
「Aは優しいね」
「そう、かな」
追加点のホイッスルが鳴り響く。
2-0
雷門にもう一点入った。
その直後に前半戦終了のホイッスルが鳴り響く。
「まぁ、残念ながらAの心配は現実になるよ」
「そうなの？」
「ああ。僕の読みが正しければ、ね」
帝国学園のベンチを見つめていると、不意にこちらに視線を寄越すものが。その人物はこちらを……正確には僕の隣に座っているAを見た。
「やはり、記事にされるとこうなるか」
恐らくだが、Aと彼ら……元雷門イレブンは連絡が途絶えていたはずだ。あのニュースを見て彼らはどう思ったんだろう。
彼の様子だけで考えるなら……彼女と音信不通になった事を気にしていたと考えるのが普通かな。だってAを見て固まっているんだもの。
「モテモテだね、A」
からかうように話しかけたがAからの返答がない。気になり隣にいる彼女を見下ろした。
「……」
相変わらず何処を見ているのか分からない瞳だ。
でもこちらを凝視する風丸一朗太には気づいているはず。
「……あの人、どうしてこっちを見ているんだろう」
「どの人？」
「あの蒼い髪の人……顔は分からない」
「見えないって事かな？」
こくり、とAは頷いた。どうやらAは目が悪いらしい。
そういえば部屋に行ったとき、何度か眼鏡を掛けている姿を見たことがある。ということは普段はコンタクトを着けているのかな？
「コンタクトは？ 着けてないのかい？」
「着けてる」
「それでも見えないのかい？」
「……試合には適しているけど、観客席からとなると見えづらい」
今はその方が良いのかもしれない。
……また彼女が頭痛に襲われる可能性がある。その度に身体に負荷が掛かっているのは間違いないはずからね。
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作者名：恵野 | 作成日時：2021年6月6日 0時
