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星章学園対木戸川清修の試合は星章学園の勝利で幕を閉じた。MVPは灰崎君と表示され、僕から見ても納得のいくものだった。
「チームプレイを考えるようになった灰崎が厄介な相手となりますね」
「ああ。だけど、灰崎君の持ち味は仲間と連携することじゃない。灰崎君を本当に怖いプレイヤーに変える要因は別の所にある。……そんな気がするんだ」
「それは？」
「あはは、良いよ。僕の勝手な妄想さ」
そう。
別の要因が彼を……灰崎君を変える。そんな気がするんだよね。
「さ、帰ろうか。僕は別の場所に用があるから、二人は先に帰って良いよ」
「分かりました」
「A。帰り道は分かるかい？」
「……うん」
「それは良かった。真っ直ぐ帰るんだよ」
フードを被るのを忘れないように、と言えばAは素直に従った。
それを見届けたあと、僕は先に観客席を後にした。
……この時点でAが出す小さなサインに気づいていれば良かった。
今日の様子から考えられなかったんだ。自分が去った後、Aの身に何が起こる事なんて。
＊＊＊
星章学園と木戸川清修の試合後
4-3で星章学園の勝ちで試合は幕を閉じた。
「豪炎寺さん、お疲れ様でした！」
「すごい試合でしたね！」
「ああ」
今年入ってきた1年達は観客席から応援していた。
今日の試合では学べるものが沢山あった。そして反省点もある。
まだ本戦に出場できないわけじゃないんだ。今後の試合に役立てるためにも話し合わないと。
そんなことを考えながら、控え室へと続く廊下を歩いていた時だ。
「……？」
ドサッ、と何かが倒れる音がした。
これは物が落ちた音じゃない……まさか、人が倒れた音……？
かなり近くから聞こえたので、音を頼りに廊下を走る。
そして……見つけた。
「おい、大丈夫か！？」
そこには頭を抱え込むように倒れている人の後ろ姿が。
慌てて近付き、その人物の身体に触れた。
起き上がらせようとした瞬間、その人物が被っていたフードが落ち、隠れていた頭が露わになった。
丁度陰だった事と、夕方だったことでその場所は暗かったが……俺には分かる。
このベージュ色の髪、短い髪。
男子は勿論、女子としても低いの身長の持ち主は、俺が知る中では一人しか当てはまらない。
「お前……Aか？」
俺の囁きに近い声に反応し、光を失った瞳が苦しそうな表情でこちらを見上げた。
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作者名：恵野 | 作成日時：2021年6月6日 0時
