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試合はどちらも無失点のまま、ただ時間が流れていく。
どちらに流れが向いているのかと問われれば、傾いているのは美濃道三だろう。
前回の雷門と星章学園との試合で思った事だが、彼らのサッカーレベルはかなり低い。それでも今日ここへ試合を見に来てしまうのは何故なんだろう。
……それを明かしたいから試合を見に来ているのかもしれないね。
前半戦終了のホイッスルが鳴り響く。ハーフタイムに入った。
少しの間、暇な時間が流れる。……あ、そうだ。
「A。この試合の勝機はどちらにあると思うかい？」
早速だが彼女の能力を測ってみよう。今の試合を見て、どちらに勝ち星があるのか。彼女の意見を聞いてみたい。
「はい。美濃道三の特長は『守り』。近年では元々から評価が高かった守備に更に磨きが掛かり、『要塞守備』と言われています。守備力で言えば美濃道三に勝機はあるでしょう」
「なるほど」
「ですが、今
Aが言葉を続けようとした瞬間、後半戦開始のホイッスルが鳴り響いた。
ホイッスルの音に遮られた事でAは言葉を止めてしまった。
でも、Aが言いたい事は分かった。その言いたい事が実際に目の前で実現した場合、勝つのは……
「さて。その指示を受けている本人である雷門は、いつ気づくかな？」
前半と同様、未だに自陣の中でボールを回し続けている雷門を眺める。
そしてチラッと隣に座るAを見下ろした。
思っていたほどサッカーに対する知識は低くない。寧ろ高い方だ。
「ではA、次の問題だ。美濃道三が狙っている事はなんだと思う？」
美濃道三の要塞守備に弾き飛ばされている雷門イレブンを眺めながら、新しい問題をAに出す。
「カウンター攻撃でしょうか」
「正解。頭良いね」
「いいえ。これは与えられたデータを元に話しているだけ。頭が良いわけじゃない」
そういえば初めて話したときも、そんな事言っていた。
確かに僕達にはあらゆるデータを与えられ、それを叩き込まれる。彼女も例外ではないようだ。
「……へぇ、やるねぇ。雷門の11番君」
「どうかしましたか」
「彼も気づいたみたいだよ？ 監督の狙いに」
しかし気づくのにかなり時間が掛かっている。
まあ、遅かったからって敗北という訳では無いけれど。
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作者名：恵野 | 作成日時：2021年6月6日 0時
