エピローグ ページ12
病院に戻ると、めるは両親に見守られてぐっすりと眠っていた。ランプの横にはモンブランとプリンとアイスのかすが転がっている。
「直人君……」
「本当に、ありがとうね」
「いえ」
お父さんは、眼鏡をとって袖口で涙を拭う。お母さんに、ラッピングされたハートのネックレスを手渡す。
「すみません。俺、今からバイト行かなきゃなんで……。終わるの２時とかになると思います。明日は朝早くからオーディションあるんで、ごめんなさい……」
窓の向こうは、もう真っ暗。街の灯りは、結露の雫を照らしている。煌めいた雫がゆっくりと滑り、窓を撫でる。街はピタリと止まる様子を見せない。
「直人君、本当にありがとう」
お母さんは、俺に深く頭を下げた。俺はギターケースを背負い、こちらこそありがとうございますと言った。お父さんが柔らかい口調で、
「めるからの伝言で、今日もおやすみメールするからって……」
ぐっすり眠っためるは、とても幸せそうだった。
「ああ……、ありがとうございます。起きる時、眠る時、絶対にメールしようって約束してるんですよね。める、いつも先におはようのメールもくれるんです。だからアラームもいらなくって。
起きたらめるに伝えてくれますか？ ――」
俺は病院を後にした。ラーメン屋で夜食をいただき、バイトをみっちり頑張った。バイトが終わり、更衣室に戻る。絶対にめるから「おやすみ！」てメールが着てる。胸を躍らせながら画面を開けると、そこには通常の待ち受け画面だけ。
俺が、おやすみメールを送った。こんなこと、初めてかもしれない。
翌朝、俺はオーディションのためいつもより早く起きた。電車に乗り、めるからのおはようメールを待ったが、来ない。俺が先におはようメールを送る。だが、10時になっても返信はない。
身体がぶるぶると震えだす。携帯画面に、水嶋 めるの表示が出て来たのは、午後２時のことだった。出たのは、めるのお父さん。奥でお母さんの泣き声が聞こえた。
めるは、もう虹の橋を渡った。
俺は街という団体行動の中で立ち止まった。見上げた空は、ハートの形の雲がひとつ。
涙も声も出なかった。呼吸さえも瞬きされも忘れていた。
虚空を仰ぐと、薔薇のバニラの匂いが鼻をかすった。
◇END◇
あとがき +可愛い画像つき→←10話 架空のデート (文字数足らなくてほぼ省略せざるえない)
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レイチェル・ハジェンズ(プロフ) - 架空夢想像さん» イベントに参加させてもらった者です。御高覧、ありがとうございます♪ 作品との出会いって大事ですよね(*^O^*) (2015年9月9日 20時) (
レス) id: 6298628eb9 (このIDを非表示/違反報告)
架空夢想像(プロフ) - とてもいい作品でした！この作品に出会えたことに感謝です (2015年9月9日 19時) (レス) id: d18e4db244 (このIDを非表示/違反報告)
レイチェル・ハジェンズ(プロフ) - 山吹草さん» 山吹草さん、ありがとうございますー！ 私もめるちゃん大好きだー！(*^^*) (2015年5月20日 11時) (レス) id: 6298628eb9 (このIDを非表示/違反報告)
山吹草(プロフ) - キャラがとてもいきいきしていて、思わず感情移入してしまいました！ 何よりめるちゃんが可愛い…♪ 最初はニコニコしながら読んでいたのですが、屋上のシーンから涙がとまらな…く… あ、あれ？また涙が…。(あ、これマジの方です。) (2015年5月20日 5時) (レス) id: e8988734ef (このIDを非表示/違反報告)
ナンシー・ハジェンズ(プロフ) - PPさん» 最後まで読んでくださってありがとうございます！ 泣くと身体に良いそうですね。俺も泣こうかな……。/めるがもし直人に会ってなかったら……と思いながらエピローグを書かせていただきました。俺は、小さな恋の歌を聞いてましたねｗ しょこたんも聞こう……ｗ (2014年9月29日 20時) (レス) id: e3161d1476 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナンシー・ハジェンズ | 作者ホームページ：https://twitter.com/seshiru777777
作成日時：2014年9月20日 20時
