ブラスバンド・フレンド！ (ページ8)

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8.兄side ―自己紹介― ページ8

楽器倉庫の奥には、打楽器が置いてある少し広いスペースがあった。

倉庫の扉に近いところでは、トランペット希望の1年生が練習していて、中にはしおりもいる。

鼓「2人とも、緊張しないで大丈夫だよ。まあ、座って」

俺たちは、そばにあったイスに腰を下ろした。

鼓「そういえば、自己紹介してなかったね。
私はさっきも言ったけれど、パーカスのパートリーダーもやってる部長の篠原鼓といいます。
太鼓の鼓(こ)って書いて鼓(つづみ)。よろしくね」

「｢よろしくお願いします！｣」

鼓『ほら、みなとの番』

鼓先輩が、隣にいた男の先輩の肩を軽くつついた。

湊『え、俺も言うの？』

鼓が湊をじっとにらんだ。

湊『しょうがないなぁ……』

湊「えーと、俺は2年の水沢湊(みなと)。
バスドラとかティンパニをやってます。よろしく」

「｢よろしくお願いします！｣」

鼓「あ、バスドラっていうのは、大太鼓のことね」

鼓先輩が説明してくれた。

湊先輩は、背が高くて黒ぶちメガネをかけてる。

廊下で音が聴こえたのは、この先輩が大太鼓を練習してたからだ。

律『あ、次、俺の番…？』
「えーと、俺は、笹川律です。
ずっとサッカーやってて、楽器は演奏したことないんですけど、がんばります」

鼓「そうなんだ、初心者でも全然大丈夫だよ！
律くん、よろしくね」

律「はい！」

鼓先輩は、『次、どうぞ』というように隣の女子に軽くうなずいた。

違う小学校だから、初めて会う子だ。

さや「私は羽鳥さやです。
小学校のマーチングクラブでは、ピットパートでした。
よろしくお願いします」

鼓「よろしくね。
さやちゃんピットやってたんだ、期待してるよ」

さや「あはは、がんばります」

2人はなにやら楽しそうだが、俺は全く会話についていけない。

律「あの…ピットって、何ですか？」

2人を邪魔しては悪いので、湊先輩に聞いた。

湊「んーと、俺と羽鳥さんの小学校は、マーチング形式なんだ。
で、ピットはドリルに参加しない打楽器のこと。
羽鳥さんはグロッケンとかシロフォンとか、鍵盤(けんばん)やってたみたい」

律「あ…ありがとうございます」

“くろっけん”に…“しろ…ほん”？

何だ、そのオセロみたいな名前は。

体験初日は分からないことだらけだった。

不安もあるが、それ以上にこのメンバーでパーカッションをやることが俺はとても楽しみだ。