三話 ページ3
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それぞれの役目を知った二人。
ライラはより知識を積み、まだ見ぬ外に期待を寄せ、
エヴァンはより確実にライラを守れるよう鍛錬を重ねた。
そして、一週間後。
王都エーデルシュタインで九人の神子と守護騎士が一堂に会し、任命式が行われた。
「余は今日、誰一人として欠けることなく集まれたことを嬉しく思う」
教皇の大きい声が響く。
絶対思ってないだろ…とエヴァンは思ったが、口に出すことはない。
エヴァンは、今度は一週間前言われたことを考えていた。
あのときエヴァンら守護騎士は、“全ての『塩の柱』を巡り、祈りを捧げ終えたら神子を殺せ”と命じられた。
殺すのだ。
あくまで同族の人間を。
それはエヴァンにとって何より怖いものだった。
18歳で騎士となってから今まで、何度もしてきたことだが、未だに恐怖を拭い切れてはいない。
今回は最後の柱まで時間があるだけまだマシだろうか。
今までも仕事だから…と割りきろうとした。しかし、恐怖は消えないどころか、むしろ倍増していく。
殺した人間達に無残に殺される夢を見たことさえあった。
はたして俺にできるのだろうか…
ぐるぐると考えていると、抑えきれず小刻みに震える手に何か温かい感触があった。
「貴方が私の守護騎士様ですね!ライラ・エルフェインと申します、今回はよろしくお願い致します」
少し下を見ると、にこりと純真無垢な笑顔を浮かべるライラの姿。
ああ、やっぱり無理そうだ。
「はい。よろしくお願いします…この命に代えても、貴方様をお守り致します」
そう言いエヴァンは跪く。
ほんの少しの沈黙の後、ライラがエヴァンの手を取り立ち上がらせると、二人は街の外へと歩いていった。
こうして、青年と少女の長い長い旅は幕を開けたのである。
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