ラズベリームースと、それから。 (ページ19)

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宮近side

「…あ、ごめん電話中だった？」

撮影の再開で俺を呼びに来てくれた海人が
申し訳なさそうに廊下に顔を出す

「ううん、大丈夫。ありがとね」

「え、何が？」

「呼びに来てくれて」

「律儀か！」

突っ込むと同時に独特な笑い声が廊下に響く

撮影の再開を教えてくれたこともだけど、

＂Aちゃん、俺仕事終わったらさ、＂

電話越しに泣いている
Aちゃんを目の当たりにして

もし海人が呼びに来なくて話が中断されなかったら

俺は何を言おうとしていた？

…あのまま会いに行ったとして、
俺にできることなんてあったのだろうか

答えが分かりきっていることを自問自答する

少しずつでいいから俺のことも知ってもらって
傷が癒えるのを待つべきだと分かっているのに、

いざAちゃんを身近に感じると
突っ走りそうになる自分に驚く

振られるのが怖いとか
割と後ろ向きなこと考えているくせに

なんてあれこれ考えていると隣で海人が口を開く

「…なーんか難しい顔してんね
元太が騒いでた子だ？」

俺の方を見ずに海人が言った

「…まぁ。振られるのが怖いくせに、
彼女のペースを考えたいのに振られそうなこと
自分がしそうで怖い」

「振られてもさ
ほんとに好きなら諦めなきゃいい話じゃん！」

「海人らしいね」

2人で笑いながらスタジオに戻りメンバーに合流した