私のキョウダイ (ページ27)

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陽も暮れてきたので電車に乗って帰宅することに。

慣れないホームに並んで電車が来るのを待っていた。

「 A 」

突然廉が私の名を呼んだ。

隣に目をやると私を見ることなくスマホを触っていて

「向こうのホームに海人と一緒におった後輩おる」

反射的にそちらを見ようと首を動かそうとしたとき

「見たらあかん」

聞いたことのない低い声で警告してきた廉は

「さっき俺らのこと見て声出しとった。

このこと海人にチクるかもしらん」

そう言ってスマホをポケットにしまい込んだ。

線路を見つめる横顔を目でなぞるしか出来なくて

風の影響で電車が遅れるアナウンスも届かなかった。

そのことに気が付いたのは彼の向こうの電光掲示板に

遅れる趣旨の文が左に動いているのが見えた時だった。

10分はそのまま立ち尽くしていたようで

向こうのホームに立つ後輩もきっとその場を動いていない。

「気付かないフリしててほしいんだけどできる？」

唐突にかけられた声とお願いにキョトンとして

前髪を触っていた左手を止める廉。

「内容にもよるけど」

「海人に聞いた話なんだけど

あの後輩は廉のことが好きなんだって」

放課後聞いた話を隠すことなく本人に伝える。

それを聞いて「えっ」と驚きを見せた。

「 …てことは、海人と付き合ってるはずのAが

休日に俺と一緒におるのを見て少なからず嫉妬して

海人にそれを伝えてAと別れさせて

それを弱みに俺と付き合う魂胆で合ってる？」

「廉って頭の回転ほんとに速いんだね」

「こんなんすぐ分かるやろ」

上を向いて「気付かんフリしとる場合かなー」と

声を出した。

小さく溜息をついた時にこれから電車がやってくると

アナウンスがホームに響いた。

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