彼と首飾り4 ページ41
立ち上がって、棚の引き出しから大事そうに2,3ほどの箱を持ってくると、テーブルにそっと置き、蓋を開けた。
「きれい…!」
そこには濃い紅、碧の石と、透き通る様な透明の石がそれぞれ収められており、どれも陽の光を受けて神秘的な輝きを放っていた。
何だか触れるのも申し訳ない気がする。
だっていずれも、ごくまれにしか採れない貴重で高価なものばかりだ。
身動きできずに宝石を凝視するだけのAに、店主は紅の石を取り上げて、Aの顔と胸元に近づけた。
「お胸元少し失礼いたしますわ」
そう言って胸元を寛げると、もう少しで触れるくらいの位置で止め、Aの肌と石を見比べる。
「ああ、やはり素敵ですわね。白い肌と相まって互いに美しさを引き立てていますわ」
次に碧の石を近づけ、こちらも同様に良いと感想を述べてくれた。
最後に残ったのが透明な石だ。
当然ながら先の2つとは違う印象を受けるだろうと思っていた。
だが、店主の手によって石がAの胸元に当てられた時、ホメロスの表情が明らかに変わった。
Aもそれに気づき、ホメロスに問う。
「どうかしたの、ホメロス?」
「いや、先の2つの石も悪くなかったが…これがあまりにもお前の肌色と合っていたから…」
「そう、ですわね…」
ホメロス同様、店主もどこか呆けた様に言った。
「白いお肌が宝石の色を反射して、宝石もまた反射し返して、それが絶妙な輝きを生み出していますわ…」
「そ、そんなに凄いの?私にはわからないわ。石が素敵なのは間違いないけれど…」
「この石で頼む。A、あとの2つも頼むか?」
ホメロスの言葉にAは慌てて首を横に振った。
「いいえ、これで十分よ!」
と言うかこれだけでも自分にはもったいないぐらいだ。
大体身に着ける機会があるのかも分からないし。
心中でそう戸惑っているAをよそに、ホメロスは店主と話を進めていた。
「首飾りの鎖はいかがいたしましょうか。この石ですとプラチナが普通ですが…」
「そうだな…だがAの肌色では金の方が似合うと思う」
「そうですわね。ホメロス様の髪とお揃いですし、並ばれると更にお似合いになるかと存じますわ」
「え!?」
店主の思わぬ言葉に素っ頓狂な声を上げたAだったが、ホメロスは慌てる事なく返事をした。
「では、これで頼む」
「はい、ご注文承りました」
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作者名:遠山すずか | 作成日時:2018年10月31日 10時