始まりの出会い４ ページ28
「あ、ごめんなさい。男の人にこんな言い方していいのかわからないけど、綺麗だなーって…」
「……」
切れ長の目がやや丸くなる。
多分呆気に取られているのだろう。
やがてホメロスはAから目を逸らすと、素っ気なく一言言った。
「そうか」
表情からは機嫌を読み取る事ができなかったが、声からはとげとげしさは感じない。
Aはそっと胸をなでおろす。
「ここにいたのか、A」
「あっ、お父様！」
聞こえてきた声に振り向いて、マルスに抱き着いた。
「マルティナがね、ここに案内してくれたの！みんなとっても強いのね」
「こ、こら、姫様を呼び捨てするな！」
「いいのよ、マルス。私達、もうお友達ですもの」
慌てるマルスの牽制を、マルティナが笑顔で遮る。
マルティナを諫める事もAを諫める事もできずに困り果てていたマルスだったが、やがてグレイグとホメロスに向き直った。
「お前たちも訓練していたのか。順調か？」
「はい、ホメロスと手合わせするには剣を振るいながら同時に頭も使わねばならないので、とても手ごたえがあります」
「お前の動きが単調すぎるんだ」
はきはきと答えるグレイグに対し、ホメロスがぴしゃりと指摘する。
何だか和やかな雰囲気を感じ、マルティナを見ると頷いてきた。
「あの２人小さい頃からずっと一緒に訓練してきたんですって。だからとっても仲良しなの」
「ふぅん…」
「私達もそうなりたいわね」
「うん！」
マルティナから差し出された手を取り、握り合った。
今日初めて会ったと言うのに、それも身分も違うのに、昔からの様に親しくなれた事が子供ながらに嬉しかった。
「それでは久しぶりにお前たちと手合わせしてみたいんだが、頼めるか？」
「本当ですか！光栄です。是非ともお願いいたします！なあホメロス」
「そうだなグレイグ。マルス殿、今日こそは負けませんよ」
マルティナと話していると、そんな会話が飛び込んで来た。
父の剣技を見られるのかと、Aは思わずグレイグを、ホメロスを、父マルスを見る。
「ああ、望むところだ。Aの手前だからと言って手加減は無用だからな」
「もちろんです！」
マルスの軽口に対し、グレイグとホメロスは同時に勢いよく答えた。
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作者名：遠山すずか | 作成日時：2018年10月31日 10時
