ある日常の記録～軍師と女戦士の場合～２【ドラクエ11 ホメロス落ち】 (ページ20)

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海底王国奇譚７ページ20

２人を明るい声で出迎えてくれたのは、茶色い大きな亀の姿をした館長だった。
どうやらあらかじめセレンから聞いていたらしい。
会釈して挨拶を返したAとホメロスは、それぞれ興味惹かれるまま展示物を見て回った。

司書の人魚によると、この博物館は人間の落とし物が集められているらしい。
中でも800年前に投げ込まれて以来、岩を突き通したまま抜けないと言う海神ポセイドンのヤリがお気に入りらしく、彼女は熱く延々と語った。

司書の話に相槌を打ちながら、そう言えばホメロスに図鑑を見せてもらいながら、ポセイドンのヤリについては消息不明だと聞かされた事があったのを思い出す。

あの頃はただの師弟関係で、大人になってから恋人同士になるなんて考えもしなかったけれど。
ふとそんな甘い想いに心をときめかせながら、司書に礼を言って傍を離れ、今度は鍋を見ている濃紅の妙に細長い魚と出会った。

こんなものまであるのかと、何の気なしに近づくと立ちはだかる様にその魚に止められた。

「旅魚の方、これに近づいてはなりません！これは人間が魚や海藻を詰め込んで煮た残酷な道具なのです！きっと罪深い魚たちが煮魚と言う刑に処せられたに違いありません！」

いや、単においしく食べる為に使っているんだけれど。
Aは心の中でそうツッコんだが、それを魚が大勢住むこの海底王国ムウレアで口にするほど愚かではない。

だが言われてみれば、煮て食べるのは魚達にとって拷問に等しい苦痛だろうと考える。
更に肉、魚に問わず自分たちが食べるものは元々全て生き物なのだ。
野菜も、麦も、果物も。

これからは食事の時は、より食物に感謝しよう。
そう心に深く誓った。

その魚は司書に勝るとも劣らないほど話好きらしい。
人間の落とし物について他にも丁寧に説明してくれた。

「今まで見た人間の落とし物の中で最も興味深かったのは、セッケンなる白い石ですね～。発見されて半日とたたずに、泡ぶくになり消えてしまったのです。実に神秘的な体験でしたよ」

まあずっと水に浸されていればそれぐらいで溶けてしまうだろう。
神秘的に思うのは地上側が海底側に対しての一方通行かと思っていたが、意外とそうでもなかったらしい。
こう言ってくれるからには、この魚も地上に少なからず魅力を感じてくれているのかもしれないと、Aは嬉しくなった。