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海底王国奇譚6 ページ19

女王セレンは瞑目すると、Aとホメロスにその優美な手のひらを翳した。
セレンの手から淡い光が生じ、瞬く間に膨らみはじける様に消えた瞬間。

「あら?」

身体に違和感を感じて足元を見ると、そこにあるはずの脚が2本ともなかった。
代わりに横目に妙なものが映り、見てみると緋色の鱗にびっしり覆われた身体。

「まさか…」

Aは身体を振ってみると、その鱗の身体も揺れた。

「貴方達の姿を魚に変えましたわ。ふふっ、なかなか可愛らしいわよ。ほら、こちらにホメロスがいましてよ」
「ぶっ」

魚Aは瞬間吹き出してしまった。
その拍子に周りの水に泡が生じて上昇して行く。

目の前には真っ白な、Aよりやや大柄な魚がいた。
愛らしいその姿に反し、琥珀色の瞳は目つきが悪いと言う反比例ぶりに失笑してしまったのである。
元々端正ではあるものの目つきは決して良くはなかったホメロスだが、魚になってそれが際立ってしまった様だった。

魚ホメロスから回れ右をして後ろを向き、精一杯声を抑えながら笑っていると、背後から不機嫌そうな声が響いた。

「いい加減にしろ。こんな事の為にわざわざ魚になったのではないだろう」
「ああ、そうね…ぷぷ…それじゃあ早速出かけましょうか。セレン様、有難うございます」

吹き出すのをどうしても堪えられないながらもセレンに礼を述べ、ホメロスとAは泳ぎだした。



「どうやら魚になっても行けるのはここまでみたいね。痛くはないけど不思議な力で押し返されるわ」

見えない天井に鼻先を突き出しながら、Aは言った。

「地上の常識では考えられない仕組みだな。セレン殿の力、と納得するほかはあるまい」

淡々と話すホメロスに相槌を打つと、そこから少し高度を下げて2人並んで泳ぎ始める。
水の蒼が王国の大部分を占める中、上部を泳ぐ紅白の魚は仲睦まじい番(つがい)として目立っている事に2人(2匹?)は気付いていなかった。

「そう言えば、さっきマルティナに聞いたんだけど、泳がないと行けない所に開館600周年になる博物館があるんですって。これを機会に海のものに触れてみたいし、行ってみない?」
「ほう、そんなものがあるのか。そうだな…面白そうだ」

表情にはあまり出さなかったが、ホメロスも持ち前の好奇心をくすぐられた様だった。

博物館は割と簡単に見つかり、Aとホメロスは並んで中に入った。

「いらっしゃいませ!ようこそムウレア国立博物館へ。地上のお客様」

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作者名:遠山すずか | 作成日時:2018年10月31日 10時

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