過去編４−長い別れ― ページ5
数年後。
「A、A！」
城の中庭。唯一生えた大木の枝に腰かけながら幹に寄りかかりながらうとうとしかけていたAは、自分の未来の主であり親友でもある少女に呼ばれて、はっと意識を覚醒させた。
「またここにいたのね、A。そろそろ勉強の時間じゃないかしら？」
「ふあぁ・・・わかった、降りるわ」
Aはうーんと背伸びをすると、幹を伝い、幹に巻き付いた不思議な根を伝い降りてマルティナの元へ辿り着く。
ふと上を見上げ、中庭を囲む四方の壁の更に上で広がる空を仰ぐ。
「明日、ユグノアへ行くのね」
「ええ」
短く頷くマルティナに、Aはやや頬を膨らませながら愚痴をこぼした。
「私も行きたいって言ったけど、ダメだって叔母様に目を三角にして怒られたわ」
マルティナはくすりと苦笑して、Aの手をそっと握った。
「私も本当はAと一緒に行きたい。今回はダメだったけど、いつか絶対一緒に行きましょう」
「うん、アーウィンさまやエレノアさま、ロウさまにもよろしくね」
貴族の身分であるにも関わらず、マルティナと分け隔てなく懇意にしてくれたユグノア王家の人々にAは思いを馳せる。
「もちろんよ、お土産楽しみにしていてね。帰ってきたらまた一緒に勉強したり遊んだりしましょう。もしかしたらそのうち仲間が1人増えるかもしれないわ」
「え？」
目をぱちくりさせるAに、マルティナは嬉しそうに言葉を続けた。
「今回ユグノアへ行くのはお生まれになった王子のお祝いのためでしょう？その子が大きくなったら、色々教えてあげたいと思うの」
マルティナは生まれてすぐに母親である王妃を亡くしている。また早くに両親を亡くしたAと共に、ユグノア王妃エレノアは2人にとても良くしてくれていた。2人もエレノアを本当の母親の様に慕っている。そのエレノアに子供ができたと聞いた時、自分たちに兄弟ができるみたいで心から嬉しく思った。
「グレイグやホメロスが剣や呪文の先生なら、私たちは遊びを教えてあげるの。駆けっこしたり、壁蹴破ったり・・・あ、木登りはAが教えてあげてね」
意気揚々と話していたマルティナだが、最後の部分は少し情けなそうに言った。
マルティナはお転婆だが、高い所は苦手なのだ。
笑顔で頷くAだが、やがて寂しげな表情に変わる。
マルティナはそんなAに静かに言った。
「そんな顔をしないでA。すぐに帰ってくるわ、ねっ」
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遠山すずか(プロフ) - りぃんさん» りぃん様、最後まで読んでいただきありがとうございました！またお気遣いのお言葉も、本当に嬉しく思います。短編の方も頑張って更新していきますので、またよろしくお願いいたします。 (2018年5月25日 16時) (
レス) id: 1a8ae502d9 (このIDを非表示/違反報告)
りぃん(プロフ) - 完結おめでとうございます！お体を優先に気長に短編お待ちしております。本当に大好きな作品でした。 (2018年5月25日 16時) (レス) id: 7ca0ccb51c (このIDを非表示/違反報告)
遠山すずか(プロフ) - りぃんさん» りぃん様、コメントありがとうございます。ホメロスへの救い欲しさが募り、この連載の執筆に至りました。楽しみにして頂いているとの事、とても嬉しいです！頑張って更新していきたいと思います。これからもよろしくお願いします。 (2018年5月14日 10時) (レス) id: 1a8ae502d9 (このIDを非表示/違反報告)
りぃん(プロフ) - 初コメ失礼します。この小説とても楽しみに読ませて頂いてます！更新頑張ってください！ (2018年5月14日 10時) (レス) id: 7ca0ccb51c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遠山すずか | 作成日時：2018年4月26日 18時
