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現在編24−軍師の慚愧― ページ32

嘘偽りのないグレイグの言葉に、強く打たれた様に目を見開くホメロス。

グレイグは続けた。

「それに、俺が戦で未だ無敗なのはお前の知略があってこそだ。敵の思考を先読みし、防御を突破する策を容易く導き出す。俺はそんなお前を尊敬している」
「グ・・・グレイグ・・・!」

グレイグの名をやっとの事で呼び、何とも言えない表情でホメロスは目を閉じる。
Aはそのホメロスの頬が少し紅潮しているのに気付いた。
そしてようやくAも口を開く。

「私もグレイグに賛成よ。貴方たちは双頭の鷲の名の通り、グレイグいてこそのホメロス、ホメロスいてこそのグレイグだと思っているわ。口にする者は少ないかも知れないけれど、みんな分かっているはずよ」

そう言いながら、Aは幼少の頃を思い出していた。

何の気なしに、ホメロスにクレイモランで勉学に励んでいた事を聞いた時、一瞬表情が固まった。
当時は大して気に留めず、いつの間にか忘れてしまっていたが、今思えば、ソルティコで修業できなかった事に対し劣等感を抱いていたのかもしれない。
Aからしてみれば、ホメロスは武勇よりも知略の方がより優れているから、それを伸ばした方がよいと言うデルカダール王の考えだったと思うのだが。

また「武勇」と「知略」とでは、確かに目に見えやすい前者の方が声を挙げて讃えられやすいだろう。
分かりやすい賞賛をもらう機会のなかったホメロスは、その機会に恵まれたグレイグを見ていて更に劣等感を募らせた。

自分が自分を認め、胸を張るに足るには十分な実績を残していたのに。
この男は意外と自己評価が低いのだろうかとAは思った。

だがその反面、ホメロスのそう言った闇に気付く事が出来なかった自分の不甲斐なさも責めた。
思うだけではなく、たった一言、言っていれば変わっていたのかもしれない。

だから今、Aは言った。
目を開けたホメロスにまっすぐ顔を向ける。

「ホメロス、私も貴方を尊敬しているわ」

ホメロスはAの言葉を静かに受け止め、しばしの沈黙の後再び顔を上げた。
その表情は、暗い。

「もっと早く、気付いていれば・・・もっと己を誇りに思えていたのなら・・・だが、もう遅い。私は取り返しのつかぬ事をしてしまった・・・!」

歯を食いしばり、俯くホメロス。
心身共に闇から解放されたその姿からは、自分の所業を悔やんでいるのが見て取れた。

現在編25−双頭の鷲の和解―→←現在編23−衝撃の事実2―



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遠山すずか(プロフ) - りぃんさん» りぃん様、最後まで読んでいただきありがとうございました!またお気遣いのお言葉も、本当に嬉しく思います。短編の方も頑張って更新していきますので、またよろしくお願いいたします。 (2018年5月25日 16時) (レス) id: 1a8ae502d9 (このIDを非表示/違反報告)
りぃん(プロフ) - 完結おめでとうございます!お体を優先に気長に短編お待ちしております。本当に大好きな作品でした。 (2018年5月25日 16時) (レス) id: 7ca0ccb51c (このIDを非表示/違反報告)
遠山すずか(プロフ) - りぃんさん» りぃん様、コメントありがとうございます。ホメロスへの救い欲しさが募り、この連載の執筆に至りました。楽しみにして頂いているとの事、とても嬉しいです!頑張って更新していきたいと思います。これからもよろしくお願いします。 (2018年5月14日 10時) (レス) id: 1a8ae502d9 (このIDを非表示/違反報告)
りぃん(プロフ) - 初コメ失礼します。この小説とても楽しみに読ませて頂いてます!更新頑張ってください! (2018年5月14日 10時) (レス) id: 7ca0ccb51c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:遠山すずか | 作成日時:2018年4月26日 18時

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