4.F ページ17
F side
玉森は、元々誰より権力を嫌っていた。
先日、崩御された先代帝の実子として生まれ、幼い頃より権力闘争の中枢にいたからだ。
T「権力は、人をおかしくする。そんなもの、オレは欲しくない」
それが、玉森の口癖だった。
なのに…
T「太輔が、オレの願いを叶えてくれないからじゃん!」
F「だから、それは…」
玉森の願いは、叶えられない。
もうずっと繰り返し伝えて来たオレの意思を知りながら、オレの人事にすら介入して来た玉森の不安や焦りは本物だ。
先代帝が亡くなり、秋になれば嫌でもオレたちは次の時代を迎えるコトになる。
しかも、今上帝の暗殺ーー
それは、決して起きてはならない事態だった。
T「太輔がオレを無視し続けるなら、オレにだって考えがある」
F「…⁈」
T「そのために、ミツを宮内省に配置したんだ。誰にも不審がられずに、いつでもミツを手元に置いておける」
F「北山に何をする気だ?」
本来、争い事を好まず穏健派の玉森には似合わない台詞だ。
その双眸の奥に宿るのは、必死にオレに救いを請う追い詰められた少年。
先代帝が、天寿を全うしていれば……
T「父上が亡くなって、オレは足元から崩れ落ちるくらいの恐怖を味わった」
…オレだって、そうだ。
今、この宮中において
更に、本来暗殺犯に狙われたのは東宮本人…玉森の抱える不安は、当然だ。
T「別に、命が惜しい訳じゃないよ…」
F「裕太、オレはお前を大事に思ってる。今までだって、ずっとそう思って来た」
T「オレが欲しいのは、そんな気休めの言葉なんかじゃない。分かってるでしょ?」
寝床から上半身を起こした玉森が、這うようにオレの足元に擦り寄る。
T「太輔は、ミツを性的な対象として見てる。つまり、あの身体が欲しいんでしょ?」
F「裕太…」
T「抱きたいなら、ミツに命令して抱かせてあげよっか?」
F「よせ!」
憧れを抱く北山に、玉森からの無体な命令は心すら破壊しかねない残酷なものだ。
そんなコト、同意出来るはずがなかった。
T「太輔って、本当良く出来てるよね。自分の運命すら従順に受け入れて、何でもないって顔してる」
F「別に、オレは…」
T「オレたちは血を分けた兄弟なのに、何でこんなにも違うんだ!」
目に涙すら浮かべた玉森に、オレは手を差し伸べてやれない。
それは、オレの本意じゃない。
T「ねぇ、オレがミツを本気で求めたら…太輔はどうする?」
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Mayu(プロフ) - sakyoさん» sakyoさん、2度目のコメントありがとうございます☆すごい絶妙なタイミングだったんですね。実は、私も結構そのテの映像をまえあし3人の姿に脳内変換してます。笑 丁度、たった今まで本作のオマケを『Talk Room』で書いていたので、宜しければそちらもお楽しみ下さい。 (2019年11月3日 22時) (レス) id: 202fbd6d68 (このIDを非表示/違反報告)
sakyo(プロフ) - 完結おめでとうございました!お話がスタートした時にちょうど観た平安貴族そのままの世界を楽しませていただきました。そしてお話が完結するタイミングで今度は宮中儀礼の展示を観てきたところで、展示の儀式を藤北玉に置き換えながらニヤニヤしてしまいました。 (2019年11月3日 22時) (レス) id: e6f004b7a6 (このIDを非表示/違反報告)
Mayu(プロフ) - ももはさん» ももはさん、ありがとうございました!みっくんにしか靡かない光源氏的なF氏…ラストは、既存シリーズに通じる安定の嫉妬深さでした。先の読めない展開…お楽しみ頂けていたら、嬉しいです☆最後までお付き合い頂き、ありがとうございます。次作もご期待下さい☆ (2019年10月28日 23時) (レス) id: 202fbd6d68 (このIDを非表示/違反報告)
Mayu(プロフ) - himacoさん» himacoさん、ありがとうございます☆やっと終わりましたー!私の作品の世界観を気に入って頂けて、すごく嬉しいです。オマケは、実はTさん目線のサイドストーリーの予定ですが、藤北ラブも前向きに検討させて頂きますね☆最後までお付き合い頂き、ありがとうございます (2019年10月28日 23時) (レス) id: 202fbd6d68 (このIDを非表示/違反報告)
ももは(プロフ) - Mayu様、完結おめでとうございます!Fさんの光源氏とても素敵でした。みっくんとだけ、関係を結んでくれるのが理想ですが(><)笑 本当に本当に知らない言葉もあり、とても勉強になりました。さすがMayu様です!先の読めぬ展開に翻弄されていたファンの一人でしたっ☆* (2019年10月28日 21時) (レス) id: db5af09c34 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Mayu | 作成日時:2019年8月11日 16時