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3.F ページ16

F side




Ki「そんな、お戯れを…」


東宮の寝所から北山の声がして、オレは本能的に渡殿を進み、次の間から声を掛けた。


F「お取り込み中、失礼致します。東宮殿下、本日のご公務の件で…」

T「それ、今じゃなきゃ駄目?」

F「可及にお耳に入れておきたく…」

あからさまに不機嫌な声を発した玉森だが、本心じゃないのはオレなら分かる。

寝所にいる東宮相手にこんな不躾に声を掛けて許されるのは、オレだからだ。


T「ミツ、じゃあまた後でね」

Ki「あ、はぃ」

T「赤くなっちゃって、可愛い…」

Ki「揶揄わないで下さい…!」


照れた様子の北山の声が寝所から聞こえて来て、オレは内心舌打ちする。


F「殿下…!」

T「分かったよ、もう…」


玉森の堪りかねた声音に続いて、寝所の御簾の向こうから北山が姿を現す。


一瞬目が合って、オレはすぐさま逸らした。

気まずい様子で、座したオレの横を通って辞去する北山からフワッと漂った玉森の香りにオレは嫉妬した。


裕太…、あいつ……!





T「何、可及で知らせなきゃいけない今日の公務なんて…本当は嘘でしょ?」


寝具の上に大の字に寝そべって、玉森はオレを見上げる。


F「可及の用事は、嘘じゃない」

T「ミツのコト?」

F「分かっているなら、話が早いな」

T「朝からちょっと刺激的だった? まさか、嫉妬しちゃった?」

F「馬鹿なコトを言うな!」



先立っての春の除目で、異例の人事発表があった。


北山の官位昇格に、宮内省への異動ーー

北山の年齢や身分では、明らかに異例と言わざるを得ない措置だった。


案の定、北山は最年少で誰もが憧れる官省へ異動し、東宮職に選ばれた。

周囲の公達に羨望の眼差しを向けられる北山の前には、それ以上の嫉妬が立ち塞がる。


……こんなの茶番だ。



F「北山を巻き込むな、と言ったはずだ。裕太が欲しいのは、北山じゃないだろう」

T「そうだよ」

先程、寝所で北山と共にいた人物とは別人の目付きでオレを見る。


T「オレが欲しいのは、ミツじゃない……太輔だ」

F「やめろ!」

T「だから、太輔が心から欲してるミツを出世させてあげたの。分かったでしょ?」

F「そんなコトして、何になるんだ?」

T「太輔…それ、本気で聞いてる?」

F「北山は、オレたちには関係ない。権力を使って人事まで変えて…らしくないぞ?」


何かが、少しずつ変わり始めている。

それはあの残酷な運命が、大事なモノすらオレから奪って行こうとする予感だった。

4.F→←2.Ki



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設定タグ:藤北 , Kis-My-Ft2 , 歴史   
作品ジャンル:恋愛
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Mayu(プロフ) - sakyoさん» sakyoさん、2度目のコメントありがとうございます☆すごい絶妙なタイミングだったんですね。実は、私も結構そのテの映像をまえあし3人の姿に脳内変換してます。笑 丁度、たった今まで本作のオマケを『Talk Room』で書いていたので、宜しければそちらもお楽しみ下さい。 (2019年11月3日 22時) (レス) id: 202fbd6d68 (このIDを非表示/違反報告)
sakyo(プロフ) - 完結おめでとうございました!お話がスタートした時にちょうど観た平安貴族そのままの世界を楽しませていただきました。そしてお話が完結するタイミングで今度は宮中儀礼の展示を観てきたところで、展示の儀式を藤北玉に置き換えながらニヤニヤしてしまいました。 (2019年11月3日 22時) (レス) id: e6f004b7a6 (このIDを非表示/違反報告)
Mayu(プロフ) - ももはさん» ももはさん、ありがとうございました!みっくんにしか靡かない光源氏的なF氏…ラストは、既存シリーズに通じる安定の嫉妬深さでした。先の読めない展開…お楽しみ頂けていたら、嬉しいです☆最後までお付き合い頂き、ありがとうございます。次作もご期待下さい☆ (2019年10月28日 23時) (レス) id: 202fbd6d68 (このIDを非表示/違反報告)
Mayu(プロフ) - himacoさん» himacoさん、ありがとうございます☆やっと終わりましたー!私の作品の世界観を気に入って頂けて、すごく嬉しいです。オマケは、実はTさん目線のサイドストーリーの予定ですが、藤北ラブも前向きに検討させて頂きますね☆最後までお付き合い頂き、ありがとうございます (2019年10月28日 23時) (レス) id: 202fbd6d68 (このIDを非表示/違反報告)
ももは(プロフ) - Mayu様、完結おめでとうございます!Fさんの光源氏とても素敵でした。みっくんとだけ、関係を結んでくれるのが理想ですが(><)笑 本当に本当に知らない言葉もあり、とても勉強になりました。さすがMayu様です!先の読めぬ展開に翻弄されていたファンの一人でしたっ☆* (2019年10月28日 21時) (レス) id: db5af09c34 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Mayu | 作成日時:2019年8月11日 16時

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