「その目の奥には」 ページ11
お昼休み、周りからの目線は痛いまま職員室へと向かう。あの先生の事だから、きっと私の事を怒鳴りつけるに違いないと私は憂鬱な気持ちになっていた。
私は進まない足をゆっくりと進めていたのだが、既に私は職員室の前にいた。深く深呼吸をし、「失礼します……」と恐る恐る足を踏み入れた。
するとそこには待っていたと言わんばかりに腕を組む松葉先生の姿が。その威厳のある姿にビクッと体を跳ね上がらせるがこんなんじゃダメだ、と私は先生の目を見る。
先生は「ここに座って」と職員室の中にある椅子へと私を座らせる。向かい合う形で先生も腰を掛けると、はぁっと溜息をつく。
「あなたがこんな制服を着て、きっと葉室さんも悲しんでいるでしょうね」
と。先生がそう言葉を発した瞬間、私の何かがプチッと切れた。こう、すぐに感情的になってしまうのは私の昔からの短所だ。
「先生なんかに楓ちゃんの気持ちが分かるはずない!」
職員室だということも忘れ、声を張ってそう発した。周りにいた先生はチラッと私を見るが、すぐに目線を戻した。
「分かっていないのは桜森さんの方でしょう?」
先生は足を組むと私に反論するかのように言葉を返してくる。この先生の余裕っぷりというか何を考えているのか分からないような雰囲気が苦手だ。
「コスプレ気分で男用の制服を着て、自分も心を男にしたつもり?」
「
先生は私の目を真っ直ぐに見詰めている。私はそれに少し怯んでしまう。
先生の言うことに私は反論出来ずにいた。今、私が心を男に出来ているかと言われたら、全くそうではないし悔しいが先生の言うことも一理あるからだ。
「まぁ、あなた達の問題だから、私には関係ないことですが」
と、教師らしからぬ発言に「はぁ!?」と声を上げてしまう。
「それでも担任かよ!」
私が席を立ち上がりそう声を放つと、先生はふっと一瞬だけ笑う。
「担任だからこそ、よ」
と。先生は席を立つと、次の授業への準備をし始めた。時計を見ると、既に授業まで5分を切っていた。
意外にも、先生は最後まで私に怒鳴ることはしなかった。
「……変わりなさい」
先生はそう言うと次のクラスに向かうべく、職員室から足を出した。
今日も先生のいう言葉に理解は追いつくはずもない。しかし先生の目はいつも以上に鋭く、私の心を全て見抜いているような気がした。
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雪見だいふく(プロフ) - 旅人さん» ありがとう御座います。更新頻度は遅めかもしれませんが、楽しみにして下されば嬉しいです。 (2019年2月20日 19時) (レス) id: b9c47787f2 (このIDを非表示/違反報告)
旅人(プロフ) - 考えさせられる小説ですごく良いと思います。更新楽しみにしてます。 (2019年2月19日 13時) (レス) id: 2893bc3ddf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪見だいふく | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/mayu02071/
作成日時:2019年1月9日 20時