23話 ページ28
彼女が今何を思っているのか分からないまま、時間だけが過ぎていく。
しかし、その時の流れを感じさせないほどに綺麗な星空と雰囲気を放つ鳥居が目の前にある。
「……聞き返さないんですね」
彼女はふふっと微笑みながらそう声を発した。こんなに綺麗に笑う彼女を初めて見た気がする。
今目の前にいる彼女は、普通の乙女のような顔をしていた。
由梨って、こんなに優しく笑うんだ……。
とそんなことを考えていたら胸が熱くなっていく。
「聞き返した方が、いい?」
私がそう聞くと、「気になるなら」と返してくる由梨。
しかし、私には怖くて到底聞けたもんじゃない。私もそこまで鈍感ではない。この雰囲気と由梨の言葉から、何となくだが分かってしまう。
「わ、私……」
私は震えた声でそう声を発する。彼女も何となく気付いているのだろうか。
「由梨のこと、そんな目で見たことなかった……」
私は俯きがちにそう声を放った。
私は、普通に男性と付き合ったこともあるし私には女同士で付き合うなんていう素質があるとは思わないのだ。
そして、前に付き合った人と色々あって今は恋愛する気になれないのである。ましてや女同士だなんて。
「なら、振り向かせるまでですね」
と強気に言葉を放つ由梨。私は「えっ」と声がもれてしまう。しかし私のこの反応が普通なのだろう。
この場所に私を連れてきた理由が、やはりその理由だったことに驚き、そして一応フラれた身でもあるにも関わらずこんなに強気でいられることへも驚く。
「覚悟してて下さいよ」
彼女はそう言葉を放つと「じゃあ帰りましょ」と言うといつも通り私の隣を歩いてくる。
そして帰り道、私は過去のことが頭から離れずにいた。
ーーー「飽きた」その言葉を一言放つと私の前から風のように去っていく。
彼に注ぎ込んだ現金は100万を超えていた。そして、いつも彼の言っていた通りに動いていた。
今思えば、彼氏彼女という関係ではなかったのかもしれない。
パシる方とパシられる方。
王様と下僕。
いじめっ子といじめられっ子。
そんな関係だったのかもしれないが、私は本気で好きだった。
だからだろう。いつしか私は、恋愛をすることにトラウマを抱いてしまっていた。
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ゆ - 尊い (2019年5月12日 17時) (レス) id: 0c30cd4e30 (このIDを非表示/違反報告)
名無しのキッコーマン(プロフ) - 途中までしか見ていませんが、とても僕はこの作風好きです!これからも更新頑張ってください! (2019年5月5日 18時) (レス) id: 6ae7a02465 (このIDを非表示/違反報告)
雪見だいふく(プロフ) - ありがとう御座います!そんなこと、あるんですね笑 もしかしたらその小説の作者さんと気が合うかもしれません笑(?) (2018年12月31日 14時) (レス) id: b9c47787f2 (このIDを非表示/違反報告)
Fall ill apple(プロフ) - お気に入りさせてもらいました。余談ですが私の好きな小説の主人公(?)と同姓同名で少し驚きました…笑 (2018年12月31日 13時) (レス) id: c31f5fcd9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪見だいふく | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/mayu02071/
作成日時:2018年12月29日 16時