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14話 ページ19

あの事件があってから5日ほど経つ。
1週間も由梨がいなかったなんてことは全く感じさせなかった。

私が、会社を出ていくと由梨が迎えに来てくれていたのだが。彼女の様子はどうもおかしい。下を向いて小型犬のようにプルプルと震えている。



「な、由梨どうしたの?」



私は駆け足で彼女の元へ向かうと由梨は、はっと私を目で捉える。
しかし由梨は、「何でもないです」とぷいっとそっぽを向いてしまう。これは絶対何でもなくない、と心の底から感じとる。私は、面倒臭いほどに彼女に「何」と聞きまくる。そんな私に折れた由梨は拗ねた様子で声を放った。



「さっきの人、誰ですか」



私は「さっきの人?」と疑問形になると由梨は「とぼけないでください」とご立腹の様子。
さっきの人……。そこで私は小さく「あっ」と声がもれる。私はそれと同時にだからか、と納得をした。
私は、さっき同僚の男性に頭を撫でられていたのだ。多分それを目撃した由梨が嫉妬をしているのだろう。
由梨も嫉妬するんだ、と安堵したと共に私はふつふつと笑いが込み上げてくる。



「な、なんで笑うんですか!」


突然笑い出した私に、彼女は顔を赤くする。もうそれすらも愛しく感じてきて私は笑いが治まらないまま由梨に対して言葉を放った。


「嫉妬してる由梨が可愛くて……っ」


笑いすぎて出てきた涙を自分の指ですくいあげながらそう言葉を返す。由梨はそれに対し、より一層顔を赤くし始めると、


「し、嫉妬ではないです……!」


と、全否定。まぁ、こんな姿で言われても説得力は皆無なのだが。
初めて由梨のこんな姿を見た気がして私は少し嬉しくなる。
「はい、はい」と適当に言葉を返すと、目に涙を浮かべる由梨。


忘れていたが、ここは会社前。もしこれで泣かれたらたまったもんじゃない。
私は、血色の良い彼女の唇に自分の唇をちゅっと軽く合わせる。


「これで許してくれる?」


すると彼女は「……仕方ないです」と許してくれた様子。
こんなので良いのだろうか。あまりにも単純過ぎないか。意外にも純粋な彼女に対し少しだけ申し訳ない気持ちになり、


「さっきの同僚なんだよね」


と。しかし「そうなんですか」と逆に適当に返されてしまう。同僚だけだと納得してくれないのか。私はそこでずっと隠しておこうと思ったことを口にする。



「いとこでもあるけど」



すると彼女は「えっ」と声を上げると「そ、それ、もっと早く言ってください!」とまたもや顔を赤らめたのだった。

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設定タグ:百合 , GL , 恋愛   
作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
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- 尊い (2019年5月12日 17時) (レス) id: 0c30cd4e30 (このIDを非表示/違反報告)
名無しのキッコーマン(プロフ) - 途中までしか見ていませんが、とても僕はこの作風好きです!これからも更新頑張ってください! (2019年5月5日 18時) (レス) id: 6ae7a02465 (このIDを非表示/違反報告)
雪見だいふく(プロフ) - ありがとう御座います!そんなこと、あるんですね笑 もしかしたらその小説の作者さんと気が合うかもしれません笑(?) (2018年12月31日 14時) (レス) id: b9c47787f2 (このIDを非表示/違反報告)
Fall ill apple(プロフ) - お気に入りさせてもらいました。余談ですが私の好きな小説の主人公(?)と同姓同名で少し驚きました…笑 (2018年12月31日 13時) (レス) id: c31f5fcd9e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:雪見だいふく | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/mayu02071/  
作成日時:2018年12月29日 16時

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