72 消化されるもの ページ38
「あの穴は?」
「あれは廃棄物入れや。ここに住んどる奴らが、ゴミを入れる場所。
あそこに入れた物は、アルクローネが消化して栄養にする。
そしてその栄養が都市のライフラインになって、リサイクル!
っていうのが建て前やな」
「実際は?」
「要らない能力者入れや」
笑顔だった彼が、急に表情を消して重く呟く。
ぞわっと、全身に寒気が走った。
あのグチャグチャな中に放り投げられて、ゴミと一緒に消化される?
嫌すぎる。
…でも、私は彼に助けられなかったら消化されてたんでしょ?
じゃあ、つまり…。
「君は直接あそこに入れられた。よほどアルクローネが君のこと嫌いなんだろうな。
だから俺が助けに行ってん」
「……」
「まだ消化される前やったから今みたいに綺麗なまま助かったんよ。
少し遅かったら、もっとグチャグチャで汚かったで」
心にグサグサ刺さる言葉を簡単に言いながら、彼は私の頭を撫でた。
その手は優しく、兄貴の要素が彼に少しだけ入っていることを思い知らせてくる。
そういえば、彼は糸腹の体にオスマンと兄貴の意識が入り込んだ融合体って行ってたけど、何て呼べばいいのだろう。
「…助けてくれて、ありがとう」
「お、素直やね」
「……なんて呼べばいい?」
「ああ、名前なぁ。融合体だから、ユーゴにでもしようか」
「ユーゴスラビア?」
「うん違う。ボケる余裕あるんやね」
軽く挟んでみたが、笑顔のまま穏やかに拒否された。
この状況で笑いを挟める余裕があるってスゴいことだと自分でも思う。
彼、ユーゴは私の頭から手を離し、椅子から立ち上がった。
「…この世界から出たい?」
「出たい」
「…じゃあ、協力者を集めよう。そろそろアルクローネのやけ食いが始まるから」
「やけ食い?」
「侵入者を逃がしたことにアルクローネが怒り狂って、兵士を全員食べること」
「兵士を!?」
「全員、漏れなく全部。城の兵士が足らなくなっても、能力で作り出せるから。
その中から協力してくれる人を探そう」
ドアを開け、彼が言う。
私は頷き返して、家を出た。
下半身も腕も無くなった俺は、怠惰な眠りを謳歌する。
何をしても自分を子供扱いするあの先輩に会いたいと、のんびり思う。
それから、いなくなってしまった相棒の影を手繰る。
…糸腹。
会いたい。
あの塩顔の幼なじみに。
零れる涙がベッドにシミを作る。
もう一滴が零れる落ちた時、その涙を誰かの舌が舐めとった。
「…貴方も食べてあげる」
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フール(プロフ) - アイウエオだよさん» 一応ピポポポのつもりです。分かりづらくてすみません…。ピポポポを使うところは話数的に自然消滅しました…。能力的には某竜依頼のパルプン○です。 (2019年4月3日 2時) (レス) id: baf0519c25 (このIDを非表示/違反報告)
アイウエオだよ - 鬱先生の“あの能力”とは‥‥‥ (2019年4月3日 1時) (レス) id: 7bcfa840f4 (このIDを非表示/違反報告)
フール(プロフ) - テルさん» ありがとうございます…!これから少し忙しくなるので、更新が遅くなってしまうかもしれませんが、頑張ります! (2019年3月25日 20時) (レス) id: baf0519c25 (このIDを非表示/違反報告)
テル - 更新来た!無理せず頑張ってください! (2019年3月25日 19時) (レス) id: ed9aff9576 (このIDを非表示/違反報告)
フール(プロフ) - d!すこすこさん» ありがとうございます!なるべく早めの更新を心がけて、頑張ります! (2019年3月20日 14時) (レス) id: baf0519c25 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:フール | 作成日時:2019年3月20日 12時