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63 先輩 ページ28

「待って!速い!」
「んふふ」
「痛い!」


ゾムに追いかけられ、リョウが悲鳴を上げる。
俺は椅子に座り、ひとらんとそれを眺めていた。
戦いの後なのに、こんなにのんびりしていていいのだろうか。
Aが、何でここにいないんだろう。
まだ再戦するには速い、ということは分かるのだが、俺としてはもうすぐに戦いに行きたい。
……俺一人で乗り込んでやろうか。


「ショウさん、大丈夫?」
「…はい」
「……ごめんね、俺ら、助けられなかった」
「いや、俺が弱いからや」
「……」
「自分の体も守れないくせに、アイツのことを守れるわけがない」


無い腕を掴む。
痛みは薬のおかげで止まったが、そこにあるべきものが無いという違和感は消えない。
Aは、俺が、弱かったから…。


「…今日、もう少ししたら会議があるんだ。
 そこで何か大事なこと話すみたいだから、ショウさん、来たら?」
「そうやな…」
「あと…」


ひとらんが立ち上がり、鞘から太刀の刀身を抜いた。


「強くなる?」
「…喜んで」


俺は片腕で大太刀を抜き、ひとらんと相対する。
いつもならもう片腕で鞘を持つのに、それができないのがキツい。
でも、腕がないまま彼に手合わせで勝てたら、少しは自信になるかもしれない。


「行くよ」


ひとらんが振るう太刀を受け止める。
さて、やるか。









「…い、だぁぁぁい!」
「ほら動かない」
「ぁあああ!」


隣のうるさい声を聞き流しながら、俺はショウが置いていったタバコを吸っていた。
銘柄が違うが無いよりかはマシだ。
俺のよりも数倍キツいタバコにくらくらしながら、うるさいアイツを眺める。
誰だっけ、アイツ。
そうだ、勝木だ。


「はい、この状態で数ヶ月待機な」
「うぅぅぅ…」
「ガンバレー」


片腕と下半身を失った勝木の泣き顔にそう言ってやると、言葉かどうかも分からない呻き声で返事された。
俺は毒を抜くだけだから点滴だけだが、彼は無くなった部位に合わせて注射やらブスブスしなくてはならないらしい。
可哀想に。


「…だ、いせんせい、ですよね…」
「そうやで」
「…………あれ?それ、先輩の!」
「ああ、タバコ?そうやで、これは…」
「ここに居るんですか!?先輩!」
「おるんちゃう?」
「っ…!今すぐ!退院します!しんぺい神さぁん!薬お願いします!」


あんなに悲鳴上げてたのに、なんやコイツ。
きゃんきゃんとうるさい声を上げる彼は、シッマとシャオちゃんに次ぐ、第三の犬に見えた。


 

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フール(プロフ) - アイウエオだよさん» 一応ピポポポのつもりです。分かりづらくてすみません…。ピポポポを使うところは話数的に自然消滅しました…。能力的には某竜依頼のパルプン○です。 (2019年4月3日 2時) (レス) id: baf0519c25 (このIDを非表示/違反報告)
アイウエオだよ - 鬱先生の“あの能力”とは‥‥‥ (2019年4月3日 1時) (レス) id: 7bcfa840f4 (このIDを非表示/違反報告)
フール(プロフ) - テルさん» ありがとうございます…!これから少し忙しくなるので、更新が遅くなってしまうかもしれませんが、頑張ります! (2019年3月25日 20時) (レス) id: baf0519c25 (このIDを非表示/違反報告)
テル - 更新来た!無理せず頑張ってください! (2019年3月25日 19時) (レス) id: ed9aff9576 (このIDを非表示/違反報告)
フール(プロフ) - d!すこすこさん» ありがとうございます!なるべく早めの更新を心がけて、頑張ります! (2019年3月20日 14時) (レス) id: baf0519c25 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:フール | 作成日時:2019年3月20日 12時

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