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29 挨拶まわり ゾム、グルッペン ページ31

「…失礼します」
「お、来たか。待っていたゾ」
「ちっすちっす」


一番重厚感のある部屋に入ると、グルッペンとゾムが何やら話し合っていた。
二人とも私を見た途端に目が輝いたのは何故だろう。
そう不思議に思うよりも早く、ゾムが私に飛びかかってきた。
ナイフが振るわれてきて、私は慌ててバック宙で避ける。
だが、すぐに壁際にまで追い詰められた。
追い詰められた先でもナイフは止まらない。
本気で私の首元を狙いに来ていた。


「ちょっ、なに…!?」
「どれぐらい強いんかなーって」
「今試さないでよ!また後で相手ならするから!」
「言ったな?」
「言ったわよ!また後でやりましょ!」
「よっしゃ、約束な」


次々に振るわれるナイフがようやく止まる。
こんな不安定な形で全部避けきった私を誰か誉めてほしい。
グルッペンは面白そうに私達の戦いを見ていたが、咳払いを一つして真面目な顔になった。


「…さて、相談だが」
「なに」
「いつランドールを潰す?」
「っ…!」


…もうその話をするのか。
私は生唾を飲み込み、そして、前回伝え損ねたことを言うために口を開いた。


「…そのことなんだけど」
「何だ?」
「リョウも助けてほしいの」
「…リョウか」
「そう。兄貴の相棒」
「分かった」
「…ありがとう」


今は生きているのかすら分からない、兄貴の相棒。
もしまだ生きていて、ランドールにいるのなら、私は彼を救いたい。
兄貴はリョウが大好きだから。


「元々、我々としてもランドールは早く落としたかったんだ。
 だからある程度の準備はもう出来ている。
 …出陣のタイミングは任せよう。いつがいい?」


頭をフル回転させながら、私はその問いかけの答えを探す。
心の準備する期間、仲間と戦闘スタイルを調節する期間は欲しい。
だが悠長にそんなことをしていると、アルクローネ等の私を狙う敵達がやって来てしまう。
なるべく速く、そして仲間と関係を築ける期間。

…いや、ちょっと待て。
戦闘スタイルを仲間と調節する必要、ないんじゃないのか。
だって私、彼らの戦い方を見ているんだから。
その戦い方に私が合わせれば、折り合いをつける必要はなくなる。
なら、なるべく速く。


「明日」
「…ほう?」
「明日、行きましょう」


私の答えに、グルッペンは口角を上げた。
ナイフで遊んでいたゾムも、ニヤリと笑っている。


「了解した。明日、ランドールを滅ぼし、祖国を取り戻そう」


グルッペンがそう言った瞬間、私の指輪が光った。

 

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みょん - 夢主ちゃん五感を消すどころか操っちゃった (2019年8月26日 15時) (レス) id: 58ac6e7e16 (このIDを非表示/違反報告)
フール(プロフ) - ひよっ子さん» ご感想ありがとうございます!頑張ります! (2019年3月17日 19時) (レス) id: baf0519c25 (このIDを非表示/違反報告)
ひよっ子 - 主人公ちゃんの悲しい過去など とりあえず全部面白いです これからも頑張ってください!!(≧∀≦) (2019年3月17日 18時) (レス) id: a20f220c99 (このIDを非表示/違反報告)
フール(プロフ) - 兎危@ファンマークは子兎さん» チノ氏のキャラがまだ定まってないので探り探りですが…。これからも結構登場させるつもりです。 (2019年3月17日 9時) (レス) id: baf0519c25 (このIDを非表示/違反報告)
兎危@ファンマークは子兎 - ち、チノ氏…!?!?まさか、チノ氏を書いてる人が居たなんて……!感激ですううううう(新人組推し) (2019年3月17日 9時) (レス) id: 029d2a2f18 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:フール | 作成日時:2019年3月15日 17時

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