１６ 温かさ ページ18
「そんなの分かんないよ！」
私は立ち上がり、グルッペンの胸倉を掴み上げる。
今まで必死に守ってきた大切なものが、一気に壊されてしまったのが、悔しかった。
その通りだ。
グルッペンは正しい。
でも、そんな正しさを誰もが持てる訳じゃないんだ。
特に私のような、弱い者は。
込み上げてくる痛み、悲しみ、怒りが一気に爆発する。
私はめちゃくちゃな思考のダムを決壊させ、グルッペンにぶつけた。
「国に反抗したら兄貴が殺される！
私は戦い続けなくちゃならない！
そりゃあ私だって嫌だよ！
戦いたくないし人だって殺したくない！
あんな国、大っ嫌いだよ！
でも！でも…！
私はあの国がまだ幸せだった時に育ったから…！
切り離せるわけないじゃんか！
私を育ててくれた国と、同じ国なんだもん！
裏切れるわけないじゃんか！
どうすればいいんだよ！
何が正解なんだよ！
教えてよ…！」
涙が止まらない。
私は声を上げて泣きながら、もう胸倉を掴む力すら無く、ずるずると座り込んだ。
ツラかった。
今までずっと。
どうすればいいのかも分からず、自分の身は自分で守らなければならない世界に、一人で放り出されて。
何回も殺されかけて。
追いかけられて。
全身傷だらけになって。
良いように捨て駒にされて。
そんな日々を送っていた私に寄り添える人なんて、誰もいない。
姿の見えない兄と、たった二人で毎日震えて。
助けてほしかった。
泣いてもいいよって、誰かが言ってくれるのを待っていた。
「俺達と共に来い」
「…っ」
「お前も、兄貴も、祖国も、全部まとめて救ってやる」
目の前に手が差し出される。
私は、この手を握り返してもいいのだろうか。
それが許される人間なのだろうか。
「…信じてくれ」
グルッペンが私に視線の高さを合わせ、じっと真っ直ぐな目線をぶつける。
その曇りない目に、私は決心した。
涙でぐしゃぐしゃな顔を強引に手で拭う。
そして私は、その手を、しっかりと握った。
「助けて…！」
「ああ。絶対に助け出してやる」
グルッペンの手は、とても温かかった。
ああ、私、生きている人に触れてるんだ。
何故か急に体から力が抜けてしまい、私はグルッペンの体にもたれかかった。
彼はただ黙って、私の体を受け止める。
ゆっくりと消えていく空間の中、私の頭に、誰かの手が触れた。
「今日まで、よく頑張ったな」
トントンの手だ。
私はその手の温かさを感じながら、目を閉じた。
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みょん - 夢主ちゃん五感を消すどころか操っちゃった (2019年8月26日 15時) (
レス) id: 58ac6e7e16 (このIDを非表示/違反報告)
フール(プロフ) - ひよっ子さん» ご感想ありがとうございます！頑張ります！ (2019年3月17日 19時) (レス) id: baf0519c25 (このIDを非表示/違反報告)
ひよっ子 - 主人公ちゃんの悲しい過去など とりあえず全部面白いです これからも頑張ってください！！(≧∀≦) (2019年3月17日 18時) (レス) id: a20f220c99 (このIDを非表示/違反報告)
フール(プロフ) - 兎危@ファンマークは子兎さん» チノ氏のキャラがまだ定まってないので探り探りですが…。これからも結構登場させるつもりです。 (2019年3月17日 9時) (レス) id: baf0519c25 (このIDを非表示/違反報告)
兎危@ファンマークは子兎 - ち、チノ氏…！？！？まさか、チノ氏を書いてる人が居たなんて……！感激ですううううう(新人組推し) (2019年3月17日 9時) (レス) id: 029d2a2f18 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：フール | 作成日時：2019年3月15日 17時
