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9 グルッペン、面会 ページ11

「侵入者が現れたらしいな」
「そうなんよ、大変やったわ〜」
「大先生は何もしてないだろ」
「バレた?」


軍靴を鳴らしながら歩くグルちゃんの後ろを、俺は護衛(何で俺?)として追従していた。
待ちに待ったグルちゃんの帰還だが、出迎える者は俺とトンち以外いない。
城も侵入者の重力のせいで滅茶苦茶になっているため、それの修理で全員忙しいのだ。
グルちゃんは侵入者が地下牢にいると聞き、外向きの軍服もそのままに階段を駆け下りていった。


「トンち、どーするん?」
「俺、修理せんとアカンから、頼んだ」
「はいはい」


俺はトンちに指示された通り、グルちゃんについて行く。
グルちゃんはもう鉄格子の前で、侵入者である少女に話しかけていた。
あんな子が侵入者なんや。
思ったより幼いな。
ほの暗い過去をあの子から感じるけど、こんな歳で侵入者を生業にしてる子はやっぱ事情があるんやろうなぁ。
まぁ、興味ないわ。


「名は?」
「……」
「なるほど、ランドールの暗殺者か」
「っ…!?」
「…反応したな」


一切喋らない少女の出身国を当て、グルちゃんは反応を誘い出す。
面白いくらいに少女は驚き、視線を惑わせた。
うーん、トンちが絶賛するぐらいの強さは、まだ彼女からは感じないな。
グルちゃんもそう思っているのか、どこか残念そうな顔をしているように見える。


「お前は強いのか?」
「……」
「…ちょっと、見せてみろ」


グルちゃんが手から黒い霧を放った。
あれは彼の能力の一つで、触れた者を死へと導く恐ろしい霧だ。
少女は無表情のまま、その霧が近付くのを見ている。
霧が顔にかかり、彼女の口元から血がゴボリと溢れ出た。
だが、彼女は微動だにせず、グルちゃんを睨んでいる。


「ほう」
「……」
「耐えるな」


少女の口が動いた。
その瞬間、俺の視界が真っ暗になる。
耳も聞こえず、匂いも感じない。
さっきまで背を預けていた冷たい壁の感触も、タバコの味もしなくなった。

…シッマが言っていた、感覚消去か。
これは確かに、ヤバいなぁ。
自分がどこにいるのかも分からないし、本当に何も感じない。

そして、五感が元に戻り、視界が開けた時。

牢屋の中に少女はいなかった。


「グルちゃん、大丈夫?」
「……アイツ、いいな」
「合格?」
「ああ。欲しい」


グルちゃんの目が輝く。
俺の五感がなくなっていた間に、何かあったらしい。
…それよりも、早く捕まえないとトンちに怒られちゃうなぁ。
俺はボーッと危機感を抱いた。


 

10 対オスマン→←8 地下牢



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みょん - 夢主ちゃん五感を消すどころか操っちゃった (2019年8月26日 15時) (レス) id: 58ac6e7e16 (このIDを非表示/違反報告)
フール(プロフ) - ひよっ子さん» ご感想ありがとうございます!頑張ります! (2019年3月17日 19時) (レス) id: baf0519c25 (このIDを非表示/違反報告)
ひよっ子 - 主人公ちゃんの悲しい過去など とりあえず全部面白いです これからも頑張ってください!!(≧∀≦) (2019年3月17日 18時) (レス) id: a20f220c99 (このIDを非表示/違反報告)
フール(プロフ) - 兎危@ファンマークは子兎さん» チノ氏のキャラがまだ定まってないので探り探りですが…。これからも結構登場させるつもりです。 (2019年3月17日 9時) (レス) id: baf0519c25 (このIDを非表示/違反報告)
兎危@ファンマークは子兎 - ち、チノ氏…!?!?まさか、チノ氏を書いてる人が居たなんて……!感激ですううううう(新人組推し) (2019年3月17日 9時) (レス) id: 029d2a2f18 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:フール | 作成日時:2019年3月15日 17時

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