17、もう子供ではないのだから ページ17
××
「国木田先輩、ほらお食べください。ここの
Aに連れられ、国木田は中華街まで来ていた。何でも今日はAのお気に入りの店が食べ放題期間中とのことで国木田と来たかったのだという。
テーブルには小籠包、麻婆豆腐、炒飯、餃子、回鍋肉、油淋鶏……といった中華の定番メニューがずらりと並んでいる。何より恐ろしいのはその殆どをAが平らげていることだ。賢治と良い勝負だろう。
「お前、よく食うな……」
「美味しいもの食べてる時が一番幸せなんです。さ、国木田先輩も食べてください」
Aは何故かぎこちない手つきで油淋鶏を切り分けて、ソースと絡めながら口へ運んだ。見てるだけでもこっちが満腹になってくる。
「……太るぞ」
「なっ……！酷いです、国木田先輩！
美味しいものはカロリーゼロなんです！」
「……」
Aの云い分に呆れながら、引き続き彼女の食べっぷりを見つめる。何か会話をしようと思って「最近、ちゃんと眠れているか」と声をかけた。
「眠れてますよ。毎朝遅刻ギリギリですけれど」
「お前なぁ……」
「う……すみません。私は元々朝は苦手でして」
「ヨコハマに来る前はどうしてたんだ……」
「お祖父ちゃんに叩き起こされていました」
今は独り暮らしなので、とAは水を飲む。
父親は？と何気なく口に出してから、はっと気がついた。Aの口から父親や母親といった言葉を聞いたことがない。彼女を迎えに来た大人も祖母ひとりだけだった。わけありなのだろう。それを可哀想だとは思わない。探偵社にはそういう人間がたくさんいて、そういう人間をたくさん見てきた。
「父親はいません。顔も知りません」
「……そうか」
「国木田先輩、お父さんになってくださいよ！」
「……俺はまだ二十二だ」
「え〜！」
「全く……少しは歳下の賢治や鏡花を見習え。お前の数倍はしっかりしているぞ」
箸を持つAの指が止まった。
そのとき、彼女がふかく傷ついたことを理解して、息を飲んだ。そして、そうですよね、と取り繕うように笑ったAを見て今度は胸が痛んだ。
お父さんになって。
冗談交じりに放たれたそれは、本心だったのだろうか。Aはこんなに甘ったれたことを云うような少女だったのだろうか。否、そうなのだろう。そうだったのだろう。周りの人間を見て麻痺していたが、本来十七の娘など、未だ幼いものなのだ。
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柊あんず(プロフ) - 香さん» いつもありがとうございます〜！早速五部の続編もあげましたのでぜひ！！はい、番外編の方の更新はいつになるか分かりませんが今後とも宜しくお願いします…(笑) Twitterやコメントなど、本当に感謝しきれません…！ (2020年6月28日 19時) (
レス) id: 30d83766f8 (このIDを非表示/違反報告)
香 - 四部完結おめでとうございます！四部は七竃ちゃんが不憫すぎて...五部でどんな展開になるのか楽しみです！ Twitterフォローさせて頂いたり、番外編の方のリクエストもさせて貰いました！五部も楽しみに待ってます！ (2020年6月28日 18時) (レス) id: 7e95bd0132 (このIDを非表示/違反報告)
柊あんず(プロフ) - 後書き。 これにて四部は完結となります！ページ数が足りなすぎて今回はここで書くことになってしまいました。ラストの表紙は竹やま様より。四部の感想などもありましたらぜひ(笑) それではまた近々五部でお会いしましょう！！ (2020年6月28日 0時) (レス) id: 30d83766f8 (このIDを非表示/違反報告)
柊あんず(プロフ) - 香さん» ありがとうございます！四部もあと少しで終わりますからね！毎回感想を頂けてとっっても励みになります…！ふふふ…続きが気になると仰って頂けるのは作者として本当に嬉しいです…！今後ともどうか宜しくお願いしますね！ (2020年6月20日 20時) (レス) id: 30d83766f8 (このIDを非表示/違反報告)
香 - 更新されてる！！今回もとても面白い話ばかりでした！探偵社と七竃ちゃんの距離がだんだん開いていってしまうようでハラハラしてます。続きが気になりすぎる！！ (2020年6月19日 7時) (レス) id: 7e95bd0132 (このIDを非表示/違反報告)
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