12、ふたりがまた逢える日は ページ12
××
鳥になりたかった。本物になりたかった。
鳥籠から脱し、重力に囚われず空を飛ぶことが出来る羽が欲しかったし、今だってそれを求めている。けれど、自分の背中に羽は畳まれていなかった。空の飛び方なんて知らないし、誰も教えてはくれない。だから、自力で、一人で、見つけるしかないのだ。
「あなたの名前を、教えてください」
その瞬間、世界から音が消えて、確かな予感だけがした。嫌な予感だと思った。
変装は完璧だった。秘書を演じていたときのようにあからさまなヒントは出さなかったし、完全に別人を装っていた。なのに、気づかれてしまった。だから、時が止まったかのように、思考そのものが停止した。
「手、痛いよ」
「え、あ……すみません」
ぐい、と彼の腕を掴んでいたAはそっと手を離した。素直なのか、莫迦なのか。否、彼女の年齢や家庭環境を考えれば何ら不自然ではない。ヨコハマに来るまで普通の人生を送って来たのだから、荒事を専門にする探偵社に身を置きながらも裏社会の匂いを一切感じないのも納得だ。食うか食われるか、生きるか死ぬかの世界で生きていたら優しさや素直さは育たない。
「くれぐれも、悪い大人に騙されないように、ね！」
───
「……あっ……！」
地面を蹴って、勢いよく走り出す。
Aに体力がないという
「……矢っ張り、ちょっかいかけすぎたかなぁ」
最初は人畜無害な司法省の秘書として彼女に近づき、
「……名前、教えてあげればよかったかな」
七竈、A。その名を胸の中で言葉にする。
形にする。しかし、この名前を口にする日が来ることはないだろう、きっと。
身体が叫んでいるのを感じた。
心臓が炙られるような熱く、身体を巡る血液は逆流しているかの如く沸騰していた。ああ、嫌な予感だ。悪い予感がしてならない。
だから、この嫌な予感を、一刻も早く───何もないままに、余計なことに気づいてしまう前に消してしまいたい。
**
13、肉まん五つは一人で食べられる→←11、欺き欺かれ、見抜き見抜かれ
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柊あんず(プロフ) - 香さん» いつもありがとうございます〜！早速五部の続編もあげましたのでぜひ！！はい、番外編の方の更新はいつになるか分かりませんが今後とも宜しくお願いします…(笑) Twitterやコメントなど、本当に感謝しきれません…！ (2020年6月28日 19時) (
レス) id: 30d83766f8 (このIDを非表示/違反報告)
香 - 四部完結おめでとうございます！四部は七竃ちゃんが不憫すぎて...五部でどんな展開になるのか楽しみです！ Twitterフォローさせて頂いたり、番外編の方のリクエストもさせて貰いました！五部も楽しみに待ってます！ (2020年6月28日 18時) (レス) id: 7e95bd0132 (このIDを非表示/違反報告)
柊あんず(プロフ) - 後書き。 これにて四部は完結となります！ページ数が足りなすぎて今回はここで書くことになってしまいました。ラストの表紙は竹やま様より。四部の感想などもありましたらぜひ(笑) それではまた近々五部でお会いしましょう！！ (2020年6月28日 0時) (レス) id: 30d83766f8 (このIDを非表示/違反報告)
柊あんず(プロフ) - 香さん» ありがとうございます！四部もあと少しで終わりますからね！毎回感想を頂けてとっっても励みになります…！ふふふ…続きが気になると仰って頂けるのは作者として本当に嬉しいです…！今後ともどうか宜しくお願いしますね！ (2020年6月20日 20時) (レス) id: 30d83766f8 (このIDを非表示/違反報告)
香 - 更新されてる！！今回もとても面白い話ばかりでした！探偵社と七竃ちゃんの距離がだんだん開いていってしまうようでハラハラしてます。続きが気になりすぎる！！ (2020年6月19日 7時) (レス) id: 7e95bd0132 (このIDを非表示/違反報告)
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