43、赦されざる興味と疑問 ページ44
××
「久しいな、鼠」
太宰先輩に続いて、フランシス先輩も新聞紙を退ける。その瞬間、彼の紫水晶の瞳が大きく見開かれた。
「ああ……素晴らしい……
驚愕とも歓喜とも取れる声を上げて彼はうっとりとした表情で云う。ひどく恍惚とした彼の様子を見て、背筋に冷たい何かが駆け巡っていくのを感じた。
彼にとって、この状況は苦しいものでしかないはずなのに、どうしてそんなに愉しそうな顔が出来るのだろうか。
好奇心に似た、淡い疑問と興味。
彼にとっては絶望的な状況ではない、ということ───？
「後は我々が引き受けましょう、太宰くん」
聞き覚えのある声と共に、幾つもの足音が近づいて来た。
「待て、そいつに触れるな！」
「Aくん、あいつを見るな」
太宰先輩が声を荒げた瞬間、私の視界はフランシス先輩の新聞によって覆われた。何が起こったのか、把握出来ないがカチャリと冷たい機関銃が一斉に動く音だけは聞こえた。その後に続く「妙な動きがあれば即射殺します」と安吾先輩の声。
恐る恐る新聞紙から顔を出せば、彼の紫の瞳と視線が交錯した。彼はあの、哀れみと同情を込めた瞳で私を見る。なんで、どうして、
「どうして、そんな目で……」
「───Aさん、あなたは武装探偵社にいられない」
「わたしはここに。ずっと、ここに」
「もう貴方に帰る場所などないでしょう」
がつん、と頭部を思いっきり殴られたような痛みが走って、目の前がチカチカと点滅する。
「Aくん、耳を貸さなくていい！早く連れて行け！」
フランシス先輩が声を張り上げ、安吾先輩は険しい表情で彼に視線を戻した。彼は頭の上で腕を組んで、「はい、行きましょう」とニッコリ笑う。
「それではAさん、ダスビダーニャ」
彼は律儀に此方に挨拶してから、連行されて行った。その背が見えなくなったのを確認して、太宰先輩に向き直る。
「……太宰先輩。ひとつお伺いしたいのですが、ダスビダーニャ、って……」
「あぁ、露西亜語で『さようなら』だね」
「……その挨拶を、日本人は云いませんよね？」
「うん、滅多にいないと思うけれど」
───それが、ひとりだけいたのだ。
私の知る中で、ただひとり。
別れ際に露西亜の挨拶を使うひとが。
**
44、絶え間なく過去へ押し戻されながら→←42、共喰いの果て、首謀者の幕引
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柊あんず(プロフ) - 乳酸菌 チーズさん» こちらの方にもコメントありがとうございます！目……目、大丈夫ですか！？ムスカ大佐！？((( (2020年1月25日 21時) (
レス) id: 5d7d3376c6 (このIDを非表示/違反報告)
乳酸菌 チーズ(プロフ) - 目ッ…目がァァ……！！！← (2020年1月25日 20時) (レス) id: df6c59ac1d (このIDを非表示/違反報告)
柊あんず(プロフ) - 果汁ジノ％さん» 国木田さんがいたのはアニメですね！確認しましたがやっぱり原作のパーティーに国木田さんはいなかったのでもう既にあの時には捕まっていたんだと思います！よってこれは伏線ではありません……(笑) (2020年1月25日 19時) (レス) id: 5d7d3376c6 (このIDを非表示/違反報告)
果汁ジノ％(プロフ) - 原作では国木田さんもパーティーに出ていたような…まさか、逮捕の時期が早まったのも伏線なのか…！？ (2020年1月25日 19時) (レス) id: 119f59d457 (このIDを非表示/違反報告)
柊あんず(プロフ) - ひいやさん» コメントありがとうございます〜！33話の伏線、そして腕の件は四部でちゃんと回収するのでご安心ください〜！「緑の灯」についてはフィッツジェラルド様の著者「グレート・ギャツビー」からの引用になるので、完全に史実ネタですね！ (2020年1月25日 11時) (レス) id: 5d7d3376c6 (このIDを非表示/違反報告)
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