38、虚無の瞳で何を視る ページ39
××
「こっちです」
A子供達を引き連れながら、来た道を戻っていた。とにかく今すぐに手当てをしなくては。時々子供達の様子を伺いながら足を早める。
その瞬間───
ぐさり、と、腰に激痛が走った。
赤い血飛沫が、視界を覆う。
吐血だった。血を吐いたのはAだった。
「どうし、て……」
「にいちゃんを殺さない───そんな言葉、信じられっかよ！」
Aを刺したのは、子供達のひとりだった。
彼は隠し持っていたナイフでAの背中を刺したのだ。
糸が切れた人形のように膝から崩れ落ち、地面に倒れ伏す。さながら血の噴水のように辺りは真っ赤に染まっていく。曖昧とする意識の中で、子供達の話し声だけが聞こえた。
「し、死んだか……？」
「あぁ……ああ！死んだよ！絶対死んだ！」
子供はAの腹に蹴りを入れる。
僅かに意識があったAの視界はぐにゃりと歪んだ。子供たちは顔を歪め、Aの腹を幾度も、幾度も、踏みつけては蹴飛ばす。肋骨に激痛が走り、肺の中の空気を絞り取られる。この痛みが永遠に続くのではないかと思った時、意識は遠のいていく。身体中が破裂しそうなくらい痛かった。
でも、もう、今死ねば辛い思いはしなくて良いのだ。これ以上の痛みは受けなくて良い。
***
「Aちゃーん！起き給え！」
鶏のような太宰の声で、目を覚ました。
真っ白な天井。医薬品の匂い。あぁ、ここは。
「……病院」
「そう、病院。やっと気づいたのかい？」
Aの向かいのベッドには患者服を身に纏った太宰が腰かけていた。その表情は普段通りの食えない笑顔だ。彼女はゆっくりと身を起こす。痛みはない。手首を見れば、傷跡も消えていた。与謝野が治したのであろう、新品同様の綺麗な身体を、Aは無言で見つめる。
「A、ちゃん」
Aの顔を覗き込んで。太宰は思わず息を飲んだ。
彼女の瞳に映るのは、恐ろしいほどの───虚無だった。
しかし、太宰が声をかけた瞬間に新しい糸に変えられた人形のようにAは瞬きを繰り返す。
「……聞いたよ、君、子供たちに刺されて瀕死の状態だったらしいね。乱歩さんが一向に戻ってこない君を見つけたんだって」
「……私、また皆様にご迷惑をおかけしてしまいました」
「……そもそも君は探偵社員ではなく、事務員だからね。寧ろ、良く頑張っている方だよ」
太宰は、Aを傷つけないよう、言葉を選びながらそう微笑んだ。
**
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柊あんず(プロフ) - 乳酸菌 チーズさん» こちらの方にもコメントありがとうございます！目……目、大丈夫ですか！？ムスカ大佐！？((( (2020年1月25日 21時) (
レス) id: 5d7d3376c6 (このIDを非表示/違反報告)
乳酸菌 チーズ(プロフ) - 目ッ…目がァァ……！！！← (2020年1月25日 20時) (レス) id: df6c59ac1d (このIDを非表示/違反報告)
柊あんず(プロフ) - 果汁ジノ％さん» 国木田さんがいたのはアニメですね！確認しましたがやっぱり原作のパーティーに国木田さんはいなかったのでもう既にあの時には捕まっていたんだと思います！よってこれは伏線ではありません……(笑) (2020年1月25日 19時) (レス) id: 5d7d3376c6 (このIDを非表示/違反報告)
果汁ジノ％(プロフ) - 原作では国木田さんもパーティーに出ていたような…まさか、逮捕の時期が早まったのも伏線なのか…！？ (2020年1月25日 19時) (レス) id: 119f59d457 (このIDを非表示/違反報告)
柊あんず(プロフ) - ひいやさん» コメントありがとうございます〜！33話の伏線、そして腕の件は四部でちゃんと回収するのでご安心ください〜！「緑の灯」についてはフィッツジェラルド様の著者「グレート・ギャツビー」からの引用になるので、完全に史実ネタですね！ (2020年1月25日 11時) (レス) id: 5d7d3376c6 (このIDを非表示/違反報告)
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