2、貴方の言葉は嘘ばかり ページ2
××
「太宰……先輩……？」
動揺に瞳を揺らすAを見て、この気まずい空気を打ち消すように、太宰はあははと笑った。何時もの表面的な笑顔を貼り付けて。上辺だけで固められた笑顔を。それを見てAは何処か安心したように、そして気まずそうに目を逸らした。
「あのぅ、太宰先輩……毎日は困りますが───たまに、一年に一回……いえ、一ヶ月に一度くらいでしたら、遊びに来ても、その……良いですよ？」
それは消え入りそうなほど小さな声だったが、確かに太宰の耳には届いた。彼女は太宰を心の何処かで軽蔑しているくせに、完全に突き放せるだけの度胸も強さも持ち合わせていないのだ。
「一ヶ月じゃなくて毎日が良いのだけれど」
「毎日は困ります。……本当にたまに、です。
……あと、手土産必須ですよ。私も……お茶菓子くらいなら出しますから」
可笑しいな、と太宰は思う。
こんなはずではなかった、こんなわけのわからない不必要な感情を抱くはず予定ではなかった。からかって遊んで時に傷つけてみて、また時には優しい言葉をかけてその反応を愉しむ───けれど何時からだろう、それだけでは満足出来なくなったのは。
「A、ちゃん。もう少し、此処にいても良いかな。うん。良いよね、ありがとう」
「自己完結しないでくださいよ……」
Aは呆れたように苦笑したものの、太宰を強制的に追い出すようなことはしなかった。慌ただしくトランクから荷物を取り出すAを眺めながら太宰はゆっくりと瞳を閉じる。
「ちょっと太宰先輩？人の家で寝ないでくださいよ」
「おや、何れ此処も私と君、二人の家になるかもしれないよ？」
「はぁ……？それって──からかわないでください」
流石にその意味が分からぬほど鈍感ではなかったのか、Aは眉間に皺を寄せた。余程自分は信用されていないらしい。
「ね、Aちゃん」
「何でしょう？」
「私と死ぬ気で恋愛してみない？」
Aは暫く瞬きを繰り返した後、少し考えるような素振りを見せ、そして盛大な溜め息を吐いた。それで直感した。またしても "からかい" だと処理されたのだ。
「そういう口説き文句……本当にやめた方が良いですよ。何れ
「美人さんに殺されるなら本望だよ」
「……太宰先輩は死ぬ為だけに生きているような方ですもんね。……決めました。私、太宰先輩が死んでも、刺されても、撃たれても、絶対に泣いたりしませんから」
**
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3128人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
柊あんず(プロフ) - 乳酸菌 チーズさん» こちらの方にもコメントありがとうございます！目……目、大丈夫ですか！？ムスカ大佐！？((( (2020年1月25日 21時) (
レス) id: 5d7d3376c6 (このIDを非表示/違反報告)
乳酸菌 チーズ(プロフ) - 目ッ…目がァァ……！！！← (2020年1月25日 20時) (レス) id: df6c59ac1d (このIDを非表示/違反報告)
柊あんず(プロフ) - 果汁ジノ％さん» 国木田さんがいたのはアニメですね！確認しましたがやっぱり原作のパーティーに国木田さんはいなかったのでもう既にあの時には捕まっていたんだと思います！よってこれは伏線ではありません……(笑) (2020年1月25日 19時) (レス) id: 5d7d3376c6 (このIDを非表示/違反報告)
果汁ジノ％(プロフ) - 原作では国木田さんもパーティーに出ていたような…まさか、逮捕の時期が早まったのも伏線なのか…！？ (2020年1月25日 19時) (レス) id: 119f59d457 (このIDを非表示/違反報告)
柊あんず(プロフ) - ひいやさん» コメントありがとうございます〜！33話の伏線、そして腕の件は四部でちゃんと回収するのでご安心ください〜！「緑の灯」についてはフィッツジェラルド様の著者「グレート・ギャツビー」からの引用になるので、完全に史実ネタですね！ (2020年1月25日 11時) (レス) id: 5d7d3376c6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
