夜空を見上げる鮫と月 part８ (ページ8)

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「愛してる」ページ8

　
　ザ「・・・何を知ってる。」

　ス「・・・。」

しばらく黙っていると、ザンザスが俺に話かける。

その返事からして、俺の推測は当たっているのだろう。

ボスも意味が分からなくなったハズだ。

俺だって意味が分からなかったのだ。

いきなり拒絶され、

震え、

絶望した目をして、

Aは目の前で呼吸困難になったのだから。

　ス「前に・・・俺も同じ事を言った。」

　ザ「・・・。」

俺はあの日の事を思い出しながら話し出す。

　ス「その後、Aは・・・何かに怯えた様子で、震え続けた。そして・・・呼吸が乱れて過呼吸になった。」

　ザ「・・・。」

あの時のAの絶望したような表情が
俺の頭から離れない。

いつも、無表情で感情を表に出さないAが。

あの時だけは・・・

何かに恐怖し、怯え、震えていたのだ。

　ス「少しして、呼吸が落ち着いたと思ったら・・・そのまま気絶したんだ。」

　ザ「・・・。」

俺の説明をザンザスは黙って聞き続けた。

静かな部屋には外からの雨音が鳴り響いている。

　ス「次にAが起きた時。その時の事は何も覚えていなかったぜ・・・・。」

俺は説明を終え、視線を窓の外へと向ける。

　ス「Aにとってその言葉は・・・何か俺達とは違う意味が・・・あるみてぇだ。」

　ザ「・・・・。」

俺が知っているのはそれで全てだ。

Aは何も話さない。

分かる事は少ないが、原因は

「愛してる」と言う単語だ。

しかし、不明な点もある。

それはディーノとAが外出から帰って来た時。

あの空気の読めないディーノが同じような単語

「愛されて・・・」

と言った時は、Aは何も反応する事は無かった。

Aがこうなる原因は、ただ

「愛す」「愛され」「愛してる」

などの単語だけでは無いように思う。

　ス「ああなる原因はそれだけじゃねぇーと思うが・・・詳しくは本人に聞かねぇーとわからねぇ。」

　ザ「・・・・。」

ザンザスは俺のその言葉を聞くと、テーブルの酒を煽る。

俺はそんなザンザスの姿を眺めながら外の雨音に
耳を傾けた。

その雨音はだんだんと、ラジオの雑音のように
聞こえ始める。

雑音の中からは聞きたい答えは見つからない。

俺は先ほどのAの姿を思い浮かべたが。

雨音の雑音によって、Aの姿は砂嵐の中に
消えていくように

霞んで見えなくなった。