優しさの押し付け ページ10
僕が彼に投げかけた質問。
それは、彼が本当に彼女を
大切に扱っているかどうかだ。
僕は疑問だった。
僕には彼が彼女を大切にしているようには
見えなかったから。
彼はあの時怒っていた。
それは僕が彼女を泣かしたと思い込んでいたから。
しかし、
僕は彼女に何もしていない。
身に覚えも無かった。
あの時、
彼女は泣いていたのではなく熱にうかされていたのだ。
高熱にやられ、目元から頬にかけて赤くなり、
返事もできないような状態だったのだろう。
そんな状態の彼女を見た彼は勘違いしたのだ。
彼女の話をしっかりと聞かないで、
自分の憶測で僕に怒りを向けた。
彼女はそんな彼の姿を見て何を思ったのか。
喋れない自分を責めたのか、
自分を心配して行動に移した彼に何を思ったのか。
僕には彼女の考えなんて分からないけれど、
彼女が今まで何度も１人で居ようとした理由が
わかった気がした。
言いたい事が言えない。
気持ちが伝わらない。
何も分かってもらえない。
そんな状況が彼女を1人にしているのかもしれない。
雲「・・・。」
彼にも言ったが、話をまともに聞こうとしないヤツと
一緒に居ようなんて誰も思わない。
それは思いや考えが一方通行だからだ。
普通であればその事に反論する事が出来るだろう。
しかし、
彼女はどうだったのか。
彼らが彼女を心配する気持ちは一方的。
声が出ないからと彼女の話をちゃんと聞かないで、
いろんな事を決めつけて、優しさを押し付けた。
その優しさは本当に彼女を助けていたのか。
僕は疑問に思ったのだ。
雲「・・・。」
「っ・・・。」
そんな事を考えながら定期的に彼女の額のタオルを
交換してやる。
彼女はまだ少し苦しそうにしていた。
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作者名：猫のこたつ | 作成日時：2020年1月12日 16時
