怯えない ページ34
雲雀 side
雲「・・・。」
僕はいつものように校内の見回りをする。
この時間は授業中なので廊下で生徒と
すれ違う事は無い。
生徒のいない静かな廊下を歩いていると
中庭に差し掛かる。
中庭を見れば、そこにはあの転校生の姿があった。
雲「・・・。」
今日も・・・１人。
彼女が転校してきて１週間だが、彼女は毎日
学校のどこかでサボっている。
昨日は屋上、その前は校舎裏。
さらにその前は体育館。
僕が見回りをしているとそんな彼女に遭遇する。
どうやら今日は中庭にいるようだった。
授業をサボるのは校則違反だ。
僕は彼女を見つける度に彼女に教室に
戻るよう注意していた。
もちろんトンファーを構えてだ。
しかし、彼女は殺気を出す僕に怯える事無く
いつも僕を見つめ、小さく会釈して教室へ戻って行く。
そんな彼女の態度に、僕はいつも彼女を
咬み殺し損ねていた。
僕は今日も授業をサボっている彼女に
注意するべく、中庭に入る。
雲「君・・・またサボっているの。」
「・・・・。」
僕は木の下に座る彼女に話しかける。
彼女は無表情で僕を見る。
雲「何度言えばわかるんだい。校則違反だよ。」
「・・・・。」
雲「・・・・。」
僕がそう言うと彼女は僕を真っすぐ見つめる。
なぜ・・・怯えない・・・。
僕は彼女を見つめながらそんな事を考える。
本当に僕に咬み殺されたいのだろうか。
こんな小さな体で僕の攻撃を受けたら本当に
タダじゃ済まないだろう。
雲「・・・君、咬み殺されたいの。」
「！！」
僕がそう言うと彼女は目を見開いて僕を見た。
彼女がこんなに反応するとは思わず、
僕は彼女を見つめる。
するとその表情は段々と崩れ、違う表情にかわる。
雲「・・・・。」
「・・・。」
彼女は僕に微笑んだ。
しかし、
彼女の目は哀れみを含んでいるように見える。
その表情は孤独だった。
雲「・・・。」
なぜ、彼女がこんな表情をしたのか、
僕には全くわからなかった。
しばらく何も言わずに見つめていると、
彼女は小さく僕にお辞儀して、いつものように
教室へ戻って行った・・・。
雲「・・・。」
僕はしばらく中庭に立ち尽くした。
そんな僕の横を小さな風が通り過ぎ、
僕の学ランを静かに揺らした。
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作者名：猫のこたつ | 作成日時：2019年10月29日 16時
