咬み殺す ページ31
雲「・・・。」
「・・・。」
しかし、彼女は僕を見つめたまま動かない。
真っすぐな瞳で僕を見ている。
・・・怯えない。
僕の殺気を受けても、彼女は何も反応しなかった。
泣く訳でも無く、怯える訳でもなく、
逃げる訳でもなく。彼女は黙って僕を見る。
男子生徒でさえ泣き叫び、僕に許しを請うのに。
彼女は動じなかった。
僕は思っても見なかった反応にトンファーを下げる。
すると彼女は少し複雑そうな顔をした。
なぜだろうか。
雲「・・・君、名前は・・・。」
「・・・・。」
僕がそう聞くと彼女は身構える。
なぜ殺気を出しても身構えないのに
名前を聞いただけで身構えるのか。
雲「・・・。」
「・・・・。」
彼女に名前を聞いたが、彼女は喋らない。
雲「・・・生徒手帳は。」
「！」
そう言うと彼女はポケットから生徒手帳を
取り出し、僕に差し出す。
僕は生徒手帳を開き、彼女の名前を確認する。
彼女はどうやらAと言うらしい。
名前を確認すると僕は彼女に手帳を返す。
雲「僕を目の前にしても口を利かないなんて、良い度胸だね。」
「・・・。」
そう言っても彼女は話さない。
雲「・・・転校してきたばかりみたいだし、今回は見逃してあげるよ。でも・・・次、校則破ったら咬み殺すよ。」
「！」
弱い小動物のくせに僕を見て怖がらないなんて
つまらない。
なんだか咬み殺す気分じゃなくなってしまった。
僕はそう言うと来た道を戻る。
中庭から再び校舎に入る直前、空を見れば、
そこには・・・
綺麗に輝く月が１人寂しく浮かんでいた。
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作者名：猫のこたつ | 作成日時：2019年10月29日 16時
