雲が聴くのは月の歌 (ページ23)

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無知の罪ページ23

京「Aちゃん、大丈夫かな・・・。」

　山「大丈夫、大丈夫、ただの気絶ならそんなに心配ねぇーって。俺が見てるから、２人は片付けに行っていいぜ？」

心配そうにAの顔を覗く笹川に
俺は明るく答える。

　黒「そう・・・じゃあ頼んだわよ。」

　京「山本君、お願いね。」

　山「おう！」

俺のその返事に２人は少し安心した顔をし、
俺にAを任せてコートの片付けに向かう。

そんな２人を見送った後、俺はAをゆっくり
横向きに抱え、片付けの邪魔にならない体育館の
隅にAを移動させる。

床に寝かせると羽織っていたジャージを
Aにかけてやった。
俺はAの頭の隣に座る。

　山「・・・さっきは・・・ゴメンな。」

　「・・・・。」

俺は寝ているAの頭を優しく撫でながら謝る。

昼休み、屋上で俺がAに何の気無しに質問した事で
Aは昔の事を思い出してしまったようだった。

獄寺の話を聞けば、過去に何かがあり、
Aは声が出なくなってしまったそうだ。

　山「・・・。」

悪気は無かったが俺のした質問のせいで、
Aを傷つけてしまった。

屋上から出て行く時のAは悲しい顔で
笑っていたのだ。

無知は罪だと言うが、まさにその通りだと
俺はその時思った・・・。

俺はAの顔を覗き込む。

眠るAの顔は眉間に少しシワが寄っていたが、
無防備で可愛かった。

俺はそんな顔を眺めながら頭を撫でる。

声が出せないと言うA。
そんな彼女は今までどんな苦しみと辛さを
背負って来たのだろう。

伝えたい事が伝えられない。

そんな状況を想像して俺は辛くなる。

　山「・・・・。」

少しでも・・・
何かAにできる事はねぇかな・・・。

俺はそんな事を考える。

ツナの方を見れば、ツナは目が覚めたようで
鼻血を流していた。

隣に居る獄寺がツナを心配している様子がわかる。
きっとそのまま保健室に向かうだろう。

俺はAの頭を優しく撫でる。

片付け終わった生徒が教室へ帰って行く。

段々と静かになる体育館の隅で俺はAが
目覚めるのを待つ事しかできなかった。