雲が聴くのは月の歌 (ページ16)

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涙の痕ページ16

「！！！」

　雲「！」

その時だった。

その女子生徒は踊り場から数歩降りた所で
足を滑らした。

その生徒は何が起こったのか分かっていない様子で、
受け身を取る事も無く、そのまま僕の方に
倒れ込んで来る。

その高さから受け身も無く落ちれば怪我では
済まないかもしれない。

僕は咄嗟に駆け寄り、
その女子生徒を受け止めた。

僕の視界にその生徒の黒く長い髪が舞う。

その生徒は小柄で小さく、
僕の腕の中にすっぽりと収まった。

　雲「・・・何してるの・・君。」

　「！！！」

僕は受け止めた女子生徒に話しかける。
するとその生徒は腕の中で僕を見上げた。

　雲「・・・・。」

僕を見上げたその顔は驚きの表情だった。

しかし、よく見ればその瞳は少し赤くなっているし、
頬には涙の痕が残っている。

ふらついて歩いていたのは泣いていたからだろうか。

僕はそんな事を考えながらその生徒を見下ろす。

　「・・・。」

　雲「・・・。」