終天に巡り逢うⅣ (ページ7)

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『…、』

目が醒めて、起き上がる。
冴え渡る感覚が、頬を伝うモノの感触をより鮮明に私に襲い掛からせる。

「A」

すぐそばで、とても大事な愛しい人の声が聞こえた。そちらを向くと、そこにはウルド様が居て。
じわり、と視界が滲む。

『ウルドさま、』

「…泣くな。そう、あの男にも言われただろ」

感じない。瑚月の気配を感じられない。
ほんとうに、彼は…消えたのだ。

『っ、』

ああ、

『…つ、…ごげつ…！！』

名前を呼んでも、応答はない。彼はもう、いない。
その事実が私を襲う。

『…瑚月…！』

たった一人の《私》を知る人。たった一人の《私》の繋がりだった人。私のたった一人の《家族》。
それを、私は。

「A」

慣れ親しんだ香りと、冷たい温もりが私を包み込む。

「A」

『っぅ…』

「俺が居る」

『…ぅ…っ』

「これから先、俺がずっとAと共に居るから。おまえを守るから。愛するから。…だから、泣くな」

ウルド様の背中に腕を回して胸元に顔を埋める私の背中を彼は優しく、壊れ物を扱うかのような慎重な手つきでゆっくりと撫でる。

『瑚月だけだった…《私》を、知ってるのは…！』

「…ああ」

『でも、もう…！』

「俺が、これからのおまえを知る。今までの知らなかった分も、俺はAのことが知りたい」

『っ』

耳元でウルド様の真摯な声が響く。

「…以前の《おまえ》のことを知ることは出来ないだろう。だが今ここにいるAのことは、知ることが出来る」

『…、』

「…俺が思っている以上に辛いということは分かる。置いていかれる辛さと孤独は理解出来るつもりだ。だが、おまえのそばには俺が居る。独りじゃないだろ」

『ぁ、』

「心が追いつかないのなら、苦しいのなら、ただ俺のそばにいろ。俺は、Aを独りきりにしたりしない。残していかないから」

ぎゅう、と服を握り締めて震える口を開く。

『…死に場所を、探してるんじゃないんですか？貴方は《死》に焦がれているのに』

「…」

『置いて、いってしまうんじゃないんで…』

言葉を遮るように荒々しく唇を塞がれる。目の前にある真っ赤な瞳が強く、私を見据えて。

「…俺は、」

『、』

「確かに、生きる意味はなかった」

『…』

「永い時間を生きなければならない。死ぬことも出来ない。生きる意味を持てない。ただ、ただ、死にながら生きてきた」

どこか諦めたような、苦しげな声は、彼のその永遠の孤独を顕している。