終天に巡り逢うⅣ (ページ48)

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番外編１４ページ48

『リーグはさぁ、』

「うん？お兄ちゃんって呼びたい？それともパパ？」

『…ほんとうざいなって』

「ごめん。うそうそ。そんな真顔で言われると僕でも傷付くからやめて欲しいな」

『じゃあ一々茶化してくるのやめなよ』

「うん。そうするね」

『うん』

「…」

『…』

沈黙が漂う。
居心地悪そうにAはもぞりと身動ぐと、はぁ…と溜息を吐いた。

『なんか調子狂うなぁ』

「あはは」

口調は荒いがこの子は根は堅実で真面目な子なのだろう。だからこそ、家族を棄てきれない。優しさから、自己犠牲に走っている。棄てれば、全てを投げ捨てれば彼女は解放されるのに。
それに、彼女の口調は恐らく無意識のうちに自分の兄を模倣しているのだ。

『リーグはさ、真祖に見てもらいたいだろ？』

「そうなのかな？」

『まぁそうだとしてさ。それって、意味のあることなのかな』

「ふむ。つまり？」

『虚しいよねって』

ぽつりと呟く。

『だって、どれだけ頑張っても見てくれないだろ？認めてくれないじゃん』

「それは君の経験談？」

『…さぁね』

彼女は気付いているのだろうか。その表情を。
かつては自分もそんな顔をしていたのだろうか、なんて考える。

「で、君は寂しいんだ？」

『…これは、寂しいって感情なのかな？』

自分の胸元に手を当ててAは首を傾げる。

「僕にはそう見えるけどね」

『感情がなくなってるのに、分かるの？』

「僕は人生の先輩なんだよ？」

『まぁ確かにそれはそうだけど』

そう言ったきり、口を噤んでしまったAを見下ろす。
美しい藤色の瞳は何かに耐えるような色を宿している。
やはり所詮は子供だ。誰だって愛情を求める。認めてほしいと願う。その感情を、この子は隠しきれてないというのに何故周りは分からないんだろうか。

「ねぇ、A」

『、？』

「僕と来るかい？」

勝手に口から出た言葉に内心自分でも驚く。

「気付いてるかどうかは知らないけれど…僕は君のことを気に入ってるんだよ」

『…アンタの細胞を受け継いでるから？』

「ああ、それも知ってるのか」

そう言って笑う。
もう全然驚かないよ。

「まぁ、僕の役に立つのかなぁとは思ってるけど」

『…利用されるのは嫌いだ』

「はは。どの口が言うのさ」

むす、と不貞腐れたAの頭を撫でる。
大人しく撫でてられているAったらもう…可愛いよねぇ。こんなに素直な子なのに自分を偽るのが巧いんだよなぁ。損な性格してるよ本当。