終天に巡り逢うⅣ (ページ38)

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番外編４ページ38

人払いを済ませた空き地でAと対峙する。
どこから聞き付けたのか、ルクもついてきた。

「A〜負けるからって泣くなよ〜」

『泣かねーよ。なんなんですか。一々弄ってこないといけない病気ですかルクさん』

「可愛がってんだろ？」

『うざい』

「生意気な新入りをコテンパンにしてやってくださいウルド様」

「うるさい」

「えー」

楽しそうに肩を落とすルクが気に入らないと顔に出す。
ああも砕けて話すのはルク相手だからだ。俺にはあそこまで砕けてない。…他の男と仲良くするのは我慢ならんな。

「A。ハンデをつける」

『…』

ムッとした表情を浮かべるA。存外彼女は負けず嫌いだし、好戦的だから。

「…俺は剣に血を吸わせては戦わない」

そこまでしたら、それこそ一瞬で終わる。それでは意味がない。
Aは少々不満げだが、己と俺の実力の差は彼女も分かっているはずだ。

『…わかりました』

不貞腐れたように彼女は返してくる。
吸血鬼になったにも関わらず、彼女にそこまで感情の減衰が見られないのは何故だ。あの男の力のせいか？

『…』

Aが目蓋を下ろし、深く息を吐くともう一度上げて…宝石のようなアメジストが俺を見据えた。

「…」

ぞくり、とガラにもなく高揚感のようなものが俺を襲う。

『…血を吸え』

美しく輝くアメジストが俺だけを見据える。俺だけを映し出す。
それがどうしようもない充足感を与えてくる。
刀に血を吸わせたAは地面を蹴り付けて向かってきた。

ーガキィィン

速い。力も強い。
身体能力を上げているとはいえ、これが普通の吸血鬼化ではないことは明白だ。
剣を斬り結ぶ。甲高い剣戟の音。繰り出される斬撃を避けたり、いなしたりする。
そんな俺を見上げてくる彼女の瞳は、闘争心が剥き出しだ。
しかしAは埒があかないと思ったのか、一度距離を取って気怠げに腰に手を当てた。

『なんか、一応私それなりに剣術得意なんですけど…こうも簡単に防がれると自信無くします』

「落ち込む必要があるか？」

『ありますよ。ショックですもん』

「…」

違和感。ほんの少し感じたそれ。
俺がそう考えたのに気付いたのか、Aは動き出す。

『起爆』

足元が光る。
いつの間にかそこには術札が。
だが発動までの時間が、自分にとっては長い。地面を蹴り付け、跳ぶと同時に爆発する。

「！」

土煙が舞う。
その中で、きらりと光るモノ。

「、」

『っ』

それを、指先で掴む。