終天に巡り逢うⅣ (ページ33)

今日:8 hit、昨日:4 hit、合計:35,168 hit

１８２ページ33

『うう、』

京都への帰り道、ぽんぽん、と私を抱き上げたまま背中を撫でるウルド様の掌は酷く優しい。
すん、と鼻を鳴らしている私の顔を覗き込むと、彼は瞳を細めた。

「そんなに悲しいのか？」

『…悲しい？』

「違うのか？」

『…』

これは悲しい、という感情なのだろうか？確かに涙は出たが、そうじゃないような気がする。

『たぶん、違います』

「そうか」

『はい』

と言ってウルド様の肩に額を乗せ、ぐりぐりと押し付ける。

「甘えただな」

『嫌ならやめます』

「誰も嫌だなんて言ってないだろう」

可愛げのない私を、優しい手であやすように頭を撫でてくる。
この掌が私は好きで、安心する。

「…断ち切れたか？」

耳元で囁かれたそれに、顔を上げてウルド様を見つめる。彼の瞳に映る私は、同じ色の瞳を持っていた。

『おんなじ色ですね』

「そうだな」

『お揃いですね』

「そうだな」

『…ウルド様、』

そっとウルド様の頬に手を添えて、少しだけ撫でる。

『…大好きです』

「ああ」

『世界で一番、ウルド様のことが大好きで…そして、誰よりも愛してます』

ふ、と彼は目尻を緩めて軽く唇を重ねる。
ちゅっ、というリップ音を鳴らして離すと額をくっつけられた。

『もう、私を縛る枷は…ここにはない』

「ああ」

『だから、』

「A」

優しく、甘く、蕩けるような声で私の名前を呼ばれ、絡め取られる。

「俺と永遠を生きる決意は定まったか？」

『…________はい。私という存在を、ウルド様だけに。永遠に』

そう言った私の唇を、ウルド様は塞いだ。
角度を変えて、何度も口付けられる。味わうかのように優しく、だが獰猛に、口内を蹂躙される。
ほんの少しだけ、目蓋を上げてウルド様を盗み見る。

長いまつ毛だ。肌もすべすべできめ細かい。
なんて、ぼんやりと考えていたら視線に気付いた彼も目蓋を上げて私を見つめ、唇を離す。

「考え事か？余裕だな」

『綺麗だなと』

「は」

馬鹿か。
と言外に言われた気がする。

『…ウルド様』

「なんだ」

『その…』

「…」

これを言うのは少し気恥ずかしい。

『…ロシアに帰ったら、…ちょっとだけ…甘やかして欲しいです…』

と、俯き加減に小さな声で言う。
しかしウルド様にはハッキリと届いたのだろう。喉で笑った気配がした。

「約束してただろ。それに俺の可愛い伴侶がそれを望むなら、少しと言わずに盛大に甘やかしてやる。そして、」

耳元に唇を寄せる。